「億ション」物件への富裕層の根強い需要

 首都圏の億ション分譲戸数は2007年にピークを打った後、2年連続で減少したが、2010年には増加に転じた。しかもこの間、億ションの平均価格は上昇し続け、景気減速にかかわらず、高額物件の引き合いが強いことを示した。億ションの分譲戸数や平均価格と景気との相関は低く、富裕層の根強い需要はコンスタントに存在しているようだ。

 首都圏の億ションの供給戸数は、2007年のミニバブルの1690件をピークに、08年1383件、09年には682件まで急減したが、10年には856件まで回復。しかし興味深いのは、この間、億ションの平均価格が07年1億2804万円、08年1億3553万円、09年1億3692万円、10年1億4017億円と、上昇し続けていたことだ。億ションの平均価格に関しては、金融危機は無縁だったと言える。

 1990年のバブル時には年間3000戸を超える億ション分譲があったというが、これはむしろ異常。それと比べれば控えめな戸数ながら、億ション市場は生き続けている。

 東京カンテイの中山登志朗上席主任研究員は、「一般のマンションと比べると、億ション市場は景気に左右されにくい。購買層が給与所得者ではなく、企業経営者や多額の遺産相続をした人など、景気低迷以前から富裕層だった人々。1億円以上の住宅ローンを組んで購入する人はまずいない」と語る。

 単に上物が豪華ならよいというものではなく、高額物件に欠かせないのは好立地。「立地条件のいい物件は限られるので、価格が上がることはあっても、なかなか下がらない。問題はお金ではなく、むしろ自分のお眼鏡にかなうような、質の高い物件が出てくるかどうか。億ションは景気の変動を受けにくい、〝堅い〟マーケットだ」(中山氏)。

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