今年の〝1億円プレーヤー〟は増えるのか?

 2010年3月期決算期から、日本では1億円以上の役員の報酬が個別に開示されるようになった。日産ゴーン社長の報酬8.9憶円をはじめ、1億円以上の役員報酬が開示された報道は記憶に新しい。ところでこの制度の導入は、役員報酬の金額にどのような影響を与えるのか? 経済産業研究所の小黒一正コンサルティングフェローが分析を行った。

 昨年の個別開示によると、国内上場企業で1億円以上の役員報酬を受け取った経営者は、累計で289人。厳しい雇用情勢や長期化するデフレなど暗いニュースが多い中で、ひときわ目を引くニュースとなった。

 すでにドイツ、イギリスでは全員の役員報酬、アメリカでも上位5名の役員報酬が個別開示されており、日本でも報酬1億円以上の役員名とその報酬額を有価証券報告書で個別開示する制度が導入された。

 この開示制度の導入によって、役員報酬の動向は今後どうなっていくのだろうか。たとえばアメリカでは、役員報酬の開示義務が拡大されてきたにもかかわらず、役員報酬の高額化傾向が進んだ。これは優秀な役員のヘッドハンティングが多いアメリカでは、他社よりも低額であることを知った役員が増額要求をするようになったためと考えられる。

 一方、プライバシーの問題、犯罪誘発等の懸念から「限度内に減額して、開示を免れたい」との声が強まれば、役員報酬が減額されるということも十分考えられる。これはかつて公開されていた「長者番付」において、「公示額の下限付近では、実際の所得分布が、理論的に予想される分布を下回った」との研究結果からも類推できる。

 実際には増額、減額どちらの効果もあるのだろうが、どちらの効果が支配的かは必ずしも定かではない。個別開示が開始されて始めて2年目の、今年の役員報酬が注目される。

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