4.5兆ドルの膨大なマネーの濁流

 世界の金融市場の流動性を測る目安とされる「ワールドダラー」は、昨年の11月末時点で約4.5兆ドル(約370兆円)に達する。これはリーマンショック前の2倍超の水準。この膨大なお金がどこへ流れ込むのかが、2011年の世界経済を大きく左右する。

 「ワールドダラー」とは米連邦準備理事会(FRB)が米国内に供給した準備預金などの供給量に、米国外の中央銀行などが外貨準備として持つ米国債を加えたもの。これがFRBによるQE2(量的緩和第2弾)や新興国の自国通貨売り・ドル買い介入等を通じて膨張。2009年の伸びは前年比50%を上回り、世界経済の成長率をはるかに凌駕している。

 問題はこの膨大なお金のゆくえ。米国の家計のバランスシート調整の継続、企業の資金需要の低迷によって、経済取引に伴うマネーの需要は弱い。このため大量の資金が、「新興国市場」「商品市場」「株式」「国債」などの金融資産に流入しているとみられる。実体経済を上回る過剰流動性は、いわゆる「カネ余り」を生じさせる。

 昨年は主要国経済が伸び悩む中でも高成長を維持する新興国市場に、あぶれたマネーが濁流のように押し寄せた。しかしこれは、新興国におけるバブル的な資産価格の上昇やインフレ高進を招くリスクと表裏一体だ。

 第一生命経済研究所の嶌峰義清主席エコノミストは「新興国でインフレやバブルが顕在化するようだと、マネーは再びリスクを嫌って主要国の安全性資産などに退避せざるを得なくなるだろう」と警鐘を鳴らす。マネーの濁流がどこに押し寄せるのか、これが2011年の世界経済を大きく左右する。

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