ベトナムで富裕層向け高級マンションが高騰

 ベトナム経済の景気拡大が続いている。また、ハノイやホーチミンなど大都市では、富裕層を狙った高級マンションが林立し、不動産価格が高騰している。ただしインフレ懸念は強く、一部ではバブルに対する警戒感も拡大。富裕層と貧困層の格差問題も深刻化している。

 ベトナムの2010年10~12月の実質GDP成長率は、前年比+7.4%に加速。2010年通年の成長率も+6.8%と前年(+5.3%)から加速し、景気拡大が続いている。

 中国などアジア経済の拡大に加えて、中国沿海部の賃金上昇で、海外資本が生産拠点をベトナムに移す動きが表面化。このため輸出が好調で、鉱工業生産を押し上げている。ただし、懸念は物価上昇。国際商品市況の高騰も影響し、インフレ率は約2年ぶりに二桁の上昇となった。

 また富裕層による、高級マンションへの投資が過熱している。ホーチミン市では、東京ドーム2個以上の敷地に、37階建てマンション8棟やショッピングモールを含む巨大施設 「サイゴンパール」の建設が進行中。05年の建設開始から半年で完売し、中には数十戸の「まとめ買い」をする豪傑もいるという過熱ぶりだ。

 国内の市場縮小に直面する、日本の不動産会社もこれに注目。三菱地所は、ハノイ市とホーチミン市で建設される総事業費180億円のマンション建設のうち、45億円分を分担する。同社がアジアへ本格的に進出するのは初めてで、成長著しいアジア向けの市場開拓を急ぐ。

 経済成長と人口増加で、ベトナムが有望市場であることは確か。ただし気になるのは不動産投資の過熱感だ。「サイゴンパール」は工事の第2段階が完了する今年、発売当時からすでに相場価格が70%も上昇した。

 富裕層の投資はほとんどが転売目的で、実需に基づく価格上昇とは言い難い。金融引き締めは不可避であり、富裕層と貧困層の格差拡大も懸念され始めている。

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