新興国の爆食と異常気象のジレンマ

 食料価格が騰勢を強めている。13日の海外市場では、米農務省が主要穀物の在庫見通しを下方修正したことで、トウモロコシと大豆の先物価格が急騰。中国などの新興国で需要が増す一方、オーストラリアの洪水や南米の干ばつなど自然災害が重なって、需給ひっ迫懸念が強まった。頻発する異常気象が供給を脅かす一方、新興国では中間層が急増し食料需要が爆発的に拡大している。食料需給は大きなジレンマに直面し、世界的な食料価格急騰が起こる可能性が懸念され始めている。

 食料価格は2000年代に入ってじりじりと上昇していたが、07年以降に急騰。FAO(国連食糧農業機関)の食料価格指数(農産物・商品55種で構成)は、08年6月に213.5の高値を付けた。08年の高騰時には、ハイチやエジプトで食料を求める市民が暴徒化し、死者を出す騒動も起こっている。

 リーマンショック後に価格指数は急落したが、09年には再び反転。10年夏にはロシアの干ばつの影響を受けて価格上昇が加速。食料価格指数は6カ月連続して上昇し、12月には214.7とリーマンショック前の過去最高値を更新した。代表的な穀物であるトウモロコシ、小麦、大豆はもちろんのこと、砂糖、食肉に至るまで騰勢を強めている。

 そして2011年、需給悪化懸念に拍車をかけたのが、オーストラリアの洪水による小麦の被害だ。またエタノール生産向けの増加が著しいトウモロコシは、アルゼンチンの干ばつが収穫見通しへの懸念を強めている。

 こうした要因による短期的な価格変動は、世界にあふれる過剰流動性の影響を受けており、ファンド資金の流出入が変動率を高めていることは否定できない。いわゆる「逃げ足の速い」資金であり、価格上昇は短期的にはバブルの可能性も秘めている。

 ただし、長期的な見通しとしてFAOは、2050年には世界人口が昨年の約68億人から約91億人に増加し、世界的な食料生産を70%増産する必要があると述べている。事態をこのまま放置すれば、世界的に食料価格が急騰する可能性は高い。一段の価格高騰は経済問題であることはもちろん、世界的に社会・政治問題化するリスクを抱えている。

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