元銀行マンが手がける革新的な立ち食いそばの店


 東京港区にある一軒の立ち食いそばが、麺好きから熱い注目を集めている。それが「MINATOYA」。モダンなアルファベットの表記が象徴するように、従来の日本そばのイメージをガラリと変えた斬新な味が人気の秘密だ。

 外壁の周囲に切り込みを入れるように設けられたガラス開口部以外、窓もない内外観を黒で統一している。さらに店の中央には黒い御影石の大きなテーブル。スタイリッシュなバーを思わせる雰囲気を心地よく裏切るかのように、テーブルを囲んで、丼に山盛りの腰の強い日本そばを大勢の客が食す。もりもあるが、人気なのは冷たい肉そばと温かい鶏そばだ。前者は煮込まれた牛肉がそばの上にたっぷり盛り付けられ、後者はつけ汁に鶏肉が浮かぶ。

 こんなユニークなしつらえ以上に際立つ特徴は、つゆにたっぷりと入ったラー油だろう。付け合せの卵を割り入れれば、異色にして芳醇な味が口中に広がる。ミスマッチどころか、パンチのある味が忘れられなくなる異色のコラボレーション。オープンは2002年というから、昨今のラー油ブームの先駆けといえるだろう。

 「細かなウンチクより、ガツンっとした味にしたくて」とそのきっかけを語るのが、オーナーの菊地さん(36)。前歴は銀行マンというから驚く。「自分の思い通りの仕事を」という信念から密かに独学、退職後さらに1年間研究を重ねてオープンにこぎつけた。

 「空腹のビジネスマンの方に、いっぱい食べていただきたかったんです。ゆっくりと座って薄く盛り付けられたそばというのは、忙しい身には現実的ではないと思いますから」。産地、打ち方、かえし――伝統の名のもとに、どこか聖域にすらなりつつあった日本そばの世界。アウトサイダーともいえるMINATOYAのそばだが、そのバックボーンにあるのは「気軽にお腹を満たす」という外食の原点。それを、あえて畑違いの人間がやってのけたところがすこぶる刺激的だ。

 「最近、メタボ対策やヘルシー志向と言われますが、それが逆にネガティブな社会にしているのではと思います。昭和のお父さんのように、がっつり食べるほうが日本を元気にするんじゃないでしょうか」

 ここ数年、その成功にあやかってか、似たようなメニューを出す店が増えてきている。だが、昼夜を問わず長い行列ができるMINATOYAほどの成功を収めているところはない。それは「企業秘密」というそばやつゆのレシピだけではなく、パイオニアならではの心意気にありそうだ。

MINATOYA
東京都港区西新橋3-1-10
Tel 03-5777-6921
営業時間11:30~17:00 17:30~20:00 土・日・祝日休み

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