米中の通貨制度を巡るジャブの応酬

 中国の胡錦涛国家主席が18日、米国を公式訪問する。これに先立ち、胡錦涛主席は16日、米紙のインタビューに対して、米ドルが依然として唯一の準備通貨になっている現在の通貨制度を批判。一方で先週、ガイトナー米財務副長官は、「中国は人民元相場を依然として綿密に管理している」と人民元相場上昇の加速を求めており、米中間では通貨制度を巡る前哨戦ともいえる舌戦が始まっている。

 また胡錦涛国家主席は同時に「(人民元の)為替レートの変動は、市場の需給など複数要因の結果だ」とし、国際通貨になるには「かなり長いプロセスがかかる」とも述べ、米国の性急な人民元切り上げ要請を牽制。緩やかな上昇にとどめる姿勢を堅持した。

 米中関係は昨年、急激に冷却化。対中貿易赤字が2010年1月から10ヶ月間で20%増大した米国では、人民元が不当に安く維持されているとの主張が先鋭化している。一方、中国国内では「対米貿易黒字の原因は、中国国内の多国籍企業による加工貿易にある」との主張もあり、米中の議論はかみ合っていない。

 米報道官はすでにホワイトハウスでの記者会見で、オバマ大統領は首脳会談で通貨問題を取り上げると発表済み。はたして通貨問題の落とし所はどこにあるのか。中国国内では人民元安を維持するための介入がインフレ懸念を助長している側面もあり、中国国内の主張も一枚岩ではない。

 インフレ懸念は、今や世界の新興国共通の課題。米国の過度な金融緩和がこれを助長している側面もある。一方、中国は米国債の最大の〝お得意様〟であり、強硬策で機嫌を損ねるのも避けたいところ。さまざまな思惑が絡み合う米中首脳会談の動向は、今後の世界経済のゆくえを占う上でも注目される。

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