ブレゲが生み出し、セイコーが守り続ける匠の技
針は鉄を熱し、急激に冷ますことで強度を出す。ところがこれだと脆くなりやすい。その欠点を補うために、火に入れるのではなく、火の周囲で炙るようにあてることで粘り強さを出す。日本刀における焼入れ、焼き戻しという手間のかかる工程を経るわけだ。この熱の化学反応の結果、針は酸化膜で覆われ、鮮やかな青へと変わる。変形しにくいという硬度に加え、さらに白地の文字盤に映える美しさも生んだ。
国産でこの工程を採用しているのがセイコー。テンパー針と呼ばれ、グランドセイコーやクレドールの上級クラスの機械式時計に使われている。元祖にも引けを取らないその職人技は、世界的にも高評価。実際に海外ロレックスからグランドセイコーへ買い換える海外のエグゼクティブが少なくないそうだが、こうしたディテールも理由のひとつといえそう。