社長が45年前に経営破たんを予告していた「林原」

『強欲一家』は超優良資産の宝庫

 「あの一族は、おとなしそうに見えるけど強欲だよ」とは地元財界関係者はいう。

 先代の故・林原一郎氏が、JR岡山駅前のザ・ハヤシバラ・シティ計画の駐車場、メセナ活動の核となる美術品、果ては岡山城内堀の一部といった超優良資産を、旧・岡山藩主の池田家から買い取った。そのため、地元では、強欲だと言われているのだ。


新宿歌舞伎町の自社ビル(中央)
 さらに、優良資産は東京や京都にまで及ぶ。京都には、JR京都駅前の「京都センチュリーホテル」、さらに東京では、日本を代表する歓楽街の歌舞伎町に自社ビルを所有する。

 先代の一郎氏が築いた莫大な資産を利用して、健氏は研究開発にいそしんだ。80年代後半のバブル期に優良資産を担保にして不動産投資を推し進めていった。

 だが、レバレッジを掛けすぎた経営は、一度、サイクルが逆回転を始めると、急加速で転落していく。バブルは崩壊、それ以降は不正会計に手を染めていく。

「研究開発やメセナ事業を続けていくために、安定収入が必要だった。それが不動産投資だったのです。上場という方法はあったのでしょうけど、『研究は同族企業ではないとできない』と林原さんは非上場にこだわりすぎましたね」

 研究分野はもちろん、不動産、美術品にいたるまで優良資産の宝庫でもある林原。ここ数年は外国企業も狙っていたという話もある。そこには、欧米企業だけでなく、中国企業などの名前もあったといわれている。

 お宝をたくさん持っているが、トップが迷走。いわゆる、つかみ取り状態だったということがうかがえる。

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