長期金利の上昇と白川日銀総裁の懸念

 新発10年物国債の利回りが9日、一時約10か月ぶりの高水準まで上昇した。前日に米長期金利が上昇したことを受けた動きで、米金利の先高観が主な要因。ただし、国債格下げが現実となった今、日本の財政問題と無縁だとは言い切れない。懸念は7日の白川日銀総裁の講演での発言からも垣間見える。

 スタンダード&プアーズ(S&P)は1月27日、日本国債の格付けをAAからAA-に引き下げた。S&Pによると、格下げは「日本の政府債務比率がさらに悪化する」との見方を反映している。

 また、ムーディーズ・インベスターズ・サービスの日本国債担当者は9日、日本国債の格付けについて「安定的な見通しをもってはいるが、格下げにつながるリスクが高まっている」と述べた。格下げのリスクはデフレの長期化と税収の低迷を踏まえたもの。今後のカギは、菅政権が6月までにまとめる「社会保障と税の一体改革」が握っていると言ってよいだろう。

 一方、白川方明日本銀行総裁は7日、日本外国特派員協会での講演で、まず、「なぜ、日本国債の金利は低位安定しているのか」との問いに対し、「日本経済が、当面は低成長と低インフレを続けるという市場の見方を反映している」「国内民間部門の貯蓄によって日本国債の大部分をファイナンスできることが、長期金利の安定に寄与している」との一般論を引用した。

 ただしその後、「しかしながら、過去の歴史が示すように、どの国も永久に財政赤字を続けることはできない。長期金利が安定している根源的な理由は、日本は税制や社会保障制度の改革などを通じて、最終的には中長期的な財政健全化に取り組む意思があると投資家が認識しているからだ」と述べた。

 発言を裏返せば、その意思がないと投資家が認識した瞬間に、長期金利の趨勢的な上昇が始まる可能性がある。総裁の懸念が現実にならないよう、政府は投資家の信頼をつなぎとめなければならない。

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