魔女狩りの標的、「喫煙」の次は「肥満」?

 喫煙者がまるで犯罪者扱いされるようになり、やむをえなく禁煙に踏み切った方も多いだろう。ところがたばこをやめると口がさみしく、また食事がおいしく感じ、その結果、体重が増える人も多い。それでは「喫煙」と「肥満」はどちらが体に悪いのか? 実は「肥満」の方が、体に数倍悪いという研究結果がある。

 喫煙が健康や寿命に悪影響を持つことは、すでに多くの実証分析が示している。こうした中、日本では昨年10月にたばこ税の大幅な引き上げが行われ、マイルドセブンは1箱300円から410円に値上げされた。まだ正式な統計はないが、これを機会に喫煙率の低下が期待される。

 しかし、経済産業研究所の森川正之副所長によれば、「米国では最近、喫煙よりもむしろ肥満の問題がクローズアップされている」という。米国のある調査によれば、将来は喫煙の減少の正の効果よりも肥満増加の負の影響が大きくなり、今後20年間、肥満が55~74歳の死亡率を引き上げると予測している。

 また、肥満は喫煙減少の正の効果に比べて、数倍の負の影響を持っているという研究結果もある。健康や寿命の観点からは喫煙も肥満も望ましくないが、健康に対する悪影響を考えれば、そのインパクトは肥満の方が大きいことを示唆している。

 「OECD によれば、日本の肥満人口比率は3.4%と比較可能な25カ国中最低水準だが、肥満気味を加えると欧米に比べれば低いとはいえ25.1%となる。既に2008年から『特定健診・特定保健指導』(いわゆるメタボ検診)が開始されたが、今後、喫煙に続いて肥満に対する魔女狩り的な風潮が拡がることも懸念される」(森川氏)。

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