予断を許さない原油価格…一段と急騰の懸念

 原油価格(WTI期近物)はエジプト情勢の落ち着きを受けていったん下落したが、北海ブレントは依然として100ドル台へ乗せて高止まりしている。エジプトの新体制の姿は見えず、火の粉はヨルダン、イエメン、バーレーンなど周辺諸国に飛び火。今後の原油価格の動向はなお予断を許さない。

 新興国を中心とした需要の増大で、原油の需要は増加傾向にある。2010年の世界の原油需要は前年比3.3%増加し、2007年以来のプラスの伸びとなった。特にアジアは中国(+12.2%)がけん引し、地域全体で+7.2%と高い伸びを示した。

 これまでの主な懸念は、紅海から地中海への原油や液化天然ガス(LNG)の輸送経路であるスエズ運河とスメド・パイプラインの運航に支障が出るかどうかであり、原油産出そのものへの影響ではなかった。しかし今後は、産油国への影響の波及が懸念される。

 東京三菱UFJ銀行調査部の資料によると、政権が退陣した、あるいは反政府デモの動きが拡大している国の産油量(千バレル/日)は以下の通り。

チュニジア(大統領辞任) 86
エジプト(大統領辞任) 742
ヨルダン(内閣総辞職) 0
イエメン(大統領退陣表明) 298
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イラン (2月14日デモ発生) 4216
バーレーン (2月14日デモ発生)48
アルジェリア (1月以降デモ頻発)1811
リビア (2月15日デモ発生) 1652

 需要増加に加えて、原油市場には米量的緩和政策を背景とした、潤沢な投資資金も流入している。中東・北アフリカで反政府デモが頻発していることから、仮に今後、イランやサウジアラビアといったOPEC主要国の情勢が悪化した場合には、原油価格が一段と上昇する可能性がある。

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