経営陣による株式買収(MBO)が相次いでいるが、先日は出版社の「幻冬舎」が臨時株主総会で、MBOが成立し株式非公開化されることが決議された。今後もCCC、アートコーポレーションなど大型MBOを控えるにあたり、個人投資家は臍(ほぞ)を噛むばかりの一方で、上場企業にとっては得なことばかり、との声もある。
予想もしない手
「制度信用取引で資金と正体を出すことなく、株式を取得できるこんな方法を使うとは思ってもみなかった」
幻冬舎
使われたのは立花証券の口座。「制度信用取引」という証券取引所の基準を満たした株のみ有効で、しかも一般信用よりも金利が低いという投資家サイドにメリットの大きい取引方法が使われた。しかし、名義は立花証券のままで議決権ベース3分の1超の保有比率となった。
臨時株主総会では、立花証券は欠席、イザベルの日本の連絡先を置く東京桜橋法律事務所の代理人が出席し決議に反対した。総会までにはイザベル側は代理人が接触し、株式の買い取りも要求してきたのだという。
とにかく、一度も顔を出さなかったイザベル。実質的には幻冬舎株買い占めのためだけに作られたようなファンドだが、YUCASEE MEDIAは代表者のヴィジャヤバラン・ムルゲス氏に質問を送付したが、期限までには回答はなかった。
顔の見えない敵対勢力との戦いを終えた、幻冬舎の見城徹社長が「たいへんうれしい」と語ったのも納得できる。
このMBOは、投資家、企業の双方にとって、多くの教訓を残してもいる。