ビールは偶然の産物だった
「あれは本当にたまたまだったんですよ」
そう振り返るのは研究メンバーで、当時は千葉大学理学部の大学院生だった物部真奈美さんだ。送別会でどうしてもビールを飲酒しなくてはならず、その翌日に採血して血液で実験すると、「いつもと同じ条件で実験したのに、染色体異常が、その時は減っていたんです」と当時を回想した。
実験は、数時間前にビールを飲酒し自身の血を採血。その血液にエックス線や重粒子線を照射し、染色体の異常を調べるというもの。すると、染色体の異常が、飲酒前の血液の約3分の2にまで減少していたという。
物部さんは不思議に思い「その後も同じことを何度かやってみたのですが、再現性があったんです」と話す。
また、マウスを使った実験も行い、腹腔内に投与した場合には、全身照射による骨髄死を明らかに抑制することが確認されたという。
アルコールなら何でも良いというのだが、なぜビールなのか。もちろん再現性が化学実験の大前提となるのだが、「アルコールと言えばビールが一般的なので」(物部さん)という理由だという。
それなら、ビールを毎日、大量に飲み続ければ良いということになるが、それだけではダメなようだ。