橋下徹・大阪府知事が掲げる「大阪都構想」が、いよいよ現実味を帯びてきた。4月の府議選、大阪市議選、堺市議選で、知事が党首を務める「大阪維新の会」が躍進し、次なるねらいは秋の大阪市長選。信を問うため、知事選と市長選を同時に実施すると宣言した橋下知事に、平松邦夫大阪市長は防戦一色となってきた。
4月選挙で維新の会は、府議会で過半数の57人、大阪市議会と堺市議会で、それぞれ33人と13人が当選し、第一党となった。選挙後、橋下知事は、「信を問うため、市長選・知事選はダブル選挙に」とあちこちで明言している。
大阪市長選に向けたシナリオは2つ。知事を辞職し、橋下氏自らが市長選に出て、知事選には維新の会から擁立する――のがひとつ。もうひとつが、市長選に候補者を擁立し、自らは知事再選を目指す。
橋下知事は、「最後にどのカードがいいのか見極める」と話し、選挙直前に最終判断する考えだが、有力視されているのは、市長選への「くら替え」のほうだ。話題を全国区にするために、より有効な手段となるからだ。
いずれの場合でも、橋下知事には以心伝心のパートナーが必要となる。橋下知事が市長選を選んだ場合は知事候補、知事選を選んだ場合は市長候補となる人物。すでに、橋下知事とテレビ番組で縁が深い、フリーのテレビキャスター、辛坊治郎氏や中田宏・前横浜市長の名前が挙がっている。
関西財界関係者は「2人とも橋下氏より年上だから礼を尽くしているが、一候補者に絞りきらずに憶測をとばすあたりは、実に巧妙だ」と話す。
一方で、居心地が悪くなってきたのが平松大阪市長だ。前回市長選で民主党推薦で当選している。今回の市議選で民主党は惨敗。同党大阪府連の樽床伸二代表は、「私の責任」と話しているが、維新の会に有力な反論をできなかったことに対する平松市長の責任を問う声も少なくない。
「大阪秋の陣」に向け、維新の会はすでに動き出しているが、民主党=平松市長側は、戦略不在。「このまま、橋下戦略の飲み込まれ、本丸(大阪市役所)は落城してしまうのだろうか」(市職員)との声も増えている。