高額所得者に増税を課した場合に、これまでは住所を移転するというのが定説であったが、このたび発表された新しい研究では、転入者よりも転出者の方が増えていることがわかった。
スタンフォード大学の社会学者クリストバル・ヤング氏と、プリンストン大学のチャールズ・バルマー氏の共同研究「MILLIONAIRE MIGRATION AND STATE TAXATION OF TOP INCOME:EVIDENCE FROM A NATURAL EXPERIMENT」によって明らかになぅった。
ニュージャージー州を例に取って研究した結果、増税後に対象人口が増えるという結果となった。
同州はニューヨークのマンハッタンにも隣接し、都市型の生活者が最も多い地域とされる。州人口は約850万人で、そのうち3%弱が年収50万ドル以上(約4100万円)とされ、その住民には2004年から、6.37%⇒8.97%へと州税を引き上げたのだった。
ところが、以下のように増税が施行された2004年から課税対象者の人口が増えている。
2003 3万3696人
2004 3万9235人
2005 4万2504人
2006 4万6651人
2007 2万7867人
当然ながら州を移った富裕層も出てきたが、新しい富裕層人口が増えるという、不思議な現象が起きている。ヤング氏は「政治的な要因はゼロに近い」と分析する。
もう少し細かく見ると、意外にも65歳以上の高齢者がニュージャージーを離れる傾向が見られた他、ニューヨークに仕事や投資案件を持っている人は離れない傾向にあった。
政治的要因はゼロとは言うものの、景気の要因はありそうだ。というのも2007年には急激な減少があり、これは、サブプライムショックによる高額所得者の減少が大きな理由だと考えられる。
こうした政治的要因は少ないようだが、景気の影響は多分に受けそうだ。