ソニーと東京電力。前代未聞の不祥事の渦中にあり、世界で最も注目を集めている2社だが、いくつかの共通項がある。「脆弱性」を放置していたことが事態を重くし、また社長が出て来ずに、しかも情報公開が遅く不十分だったことが信頼低下を招いたことだ。
ソニーのゲーム機器プレイステーションのネットワークワービス(PSN)で個人情報漏えいした可能性が高い問題で、現在までに述べ1億件以上の個人情報にまでその範囲は及んでいる。
原因はハッカーによる不正な侵入を許したこと。問題はサイバー攻撃は以前からも行われてきたことで、「脆弱性に対処していなかった」とソニーは記者会見で落ち度を認めざるをえなかった。常に破られる可能性を有しているかぎりにおいて、早急に対処する必要があった。
また、東京電力の福島第一原子力発電所は、2002年に米GEの技術者に内部告発で、データ改ざんが明らかとなり社長、会長をはじめ引責辞任することとなった。もちろん、それまでにも、構造や津波への対処について多くの指摘はされており、脆弱性を認知していないわけではなかっただろう。
ソニーは大規模なネットワークサービスを柱として事業戦略の展開を描き、東電はベトナムなどにプラント輸出が目前に迫っていた。今後の先行きに暗雲が立ち込めるような、大不祥事に足元をすくわれてしまった。
もうひとつは「社長不在」ということ。ソニーはハワード・ストリンガー最高経営責任者は出てきていない。5月1日の会見に出席した平井一夫氏は、PSN事業のソニー・コンピュータテイメントのトップだが、ソニーでは副社長だ。
東電は清水正孝社長が、3月11日に東日本大震災が発生したが2日後の13日夜に会見。しかし、その後は入院していたことをなかなか公表せずに表に出てこなかった。途中、勝俣恒久会長がワンポイントで出てくるなど迷走している様子がうかがえた。
さらに、情報の公開が発生から日が経っていることは言うまでもない。
ただ、両社の会見では注目度は東電の方が高いという意味でソニーは助かっている印象は受ける。5月1日という連休の日曜日を選んだこともあり、会場で記者用に準備されたイスは全部埋まらず。また、各社とも社会部の主力記者は震災や東電に投入しており、ソニーの会見では手薄な印象。また外国人記者は数えるほどだった。
どちらも長期戦になることは必死で、社内体制の抜本的な見直しと洗い直しが必要になるだろう。