◆5年で世界シェア10%に◆
1組の夫婦が飛行機の窓から外の景色を眺めていた。彼らは、飛行機を選びに来た“お客”だ。セールスマンは「プライベートジェット機(以下PJ)は出張用だけでなく、接待にも最適です。お客さんはきっと良い印象を持ってくれるでしょう」と巧みに売り込む。
中国ではPJ機の売り上げも年々増えている。2009年11月~11年2月まで中国で登録されたPJは28機だったが、今年4月末までに香港やマカオを含めると126機に倍増した。2011年胡润財富報告」によると、1000万元以上(約1億2600万円)の資産をもつ富豪96万人のうち、実に6分の1がPJの購入を検討している事が明らかになった。今や中国富豪にとって成功の証なのだ。
だが、中国のPJ市場は全世界で1%に満たない。今後、5年間で10%にまで増えると見られ、世界のメーカーが中国進出に力を入れている。
現在、人気があるのはカナダのボンバルディアで、中国のPJ市場の30%を占める。同社はアジア・太平洋地域に中国を中心としたサービス網を建設予定で、既に3000万ドル(約24億5000万円)を投資した。
◆「黒飛族」がなぜ減らないのか◆
一方で、現在の中国で増えているのが“黒飛族”と呼ばれる人たちだ。国の許可なしに空を飛ぶ人々のこと。PJの急増に、中国政府の対応が追い付かず、飛行許可の免許を取るためには未だに長期間、複雑な手続きが必要なのだ。
黒飛族は見つかれば罰金が科せられる。この罰金、一般の人々ならとても支払えない額だが、PJを保有する富豪となれば“すずめの涙”。“黒飛族”が増える理由はここにある。また実際に捕まった人の話によると、本来なら10万元(約120万円)科せられたところが、当局との“話し合い”の末、2万元(約25万円)に減額されたのだという。
実は中国政府もPJの普及に協力的で、5年以内に低空領域の開放を進め、長春、広州など一部の地域では、今年の末にも開放する見込みだという。また、PJ専用のレストラン会社や、車庫会社、修理施設や、操縦訓練施設など様々な関連施設の建設について支持しており、これも今後の普及が見込まれる大きな理由の一つとなっている。