吉田所長にすり寄る東京電力?

 東京電力の福島第一原子力発電所の吉田昌郎所長が先日、JNNの単独インタビューに応じ「もし(海水注入を)止めていたら死ぬかもしれない」と語った。メディアの取材に登場するのはこれが初めて。

 3月12日の原子炉への海水注入については、本社からは中断するようにとの指示が出たとされるが、吉田所長の現場判断で実際には止めずに注入を続けていたという結論となっている。

 まずは生きるか死ぬか。現場と、本社や政府との距離感を感じさせる証言でもある。IAEAの査察の前に決着させたいとの意向のため? 真実は闇に葬り去られた感があるが、吉田所長に世論の風は吹いている。
 
 報告の不備ということで原子力・立地本部長の武藤副社長が、吉田所長の処分を検討することも言及した。だが、6月5日になり、東電は海外プレス向けに、吉田所長の写真も初めて公開。作業服で会議に出席し、何やらマイクで話している場面だ。処分する人の写真を表に出すことは考えられない。これは、東電が処分から方向転換したという意味なのか。

 母校である大教大天王寺中、高のOBたちからはブログなどで、「こんなすごい先輩がいたのか」などとする称賛の声が多く挙がっている。

 有事の際には、トップはもうすぐ退任する清水正孝社長のようなタイプよりも、吉田所長のようなタイプがやはり待望されているということでもある。

 関係者によると、福島第一の所長は東電社内では出世コースとも言われる。東電も世論を敵にしたくがないために、吉田所長に手のひらを返し始めたということか。

 また取材の最後に「福島県の地元の皆さんにご迷惑かけたということ、これはこの事故が起きてから忘れたことはありません。本当に皆さんに申し訳ない」と謝罪していた。


福島第一原発の吉田昌郎所長(東京電力撮影)

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