中国政府が発表した調査報告で、内モンゴル自治区・オルドス市の一人当たりのGDPが香港を越え、中国1位となった。
オルドスは資産総額が1億元(12億円)を超える富豪の数が7000人以上にのぼり、資産総額100万元(1200万円)の人は“貧乏”とみなされるほどだ。市内では217人に1人が億万元長者、15人に1人が1000万元長者となる計算。中国で一番裕福な都市は、北京でも上海でも、香港でもなく、北の砂漠の辺境地、内モンゴル自治区のオルドス市だった。
中国内モンゴル自治区西南部に位置するオルドス市は人口150万人、中国でいえば地方の小都市といったところ。かつて牧畜と農業が中心だったが、年々砂漠化が進み、農地を奪われた農民は北京で物乞いをするほど貧しかったという。北京で、物乞いをしている人の出身をたずねれば、そのほとんどがオルドス市だった。ところが、その“オルドス”がGDPで中国1位となった。
オルドスがここまで豊かになった理由は、石炭を始め豊富な資源にある。中国政府は2004年、西部大開発構想の一環として、炭鉱開発の為に巨額の補助金を投資している。オルドスでは毎年5億トンもの石炭を産出し、2250億元(約2兆8000億円)の資産が増え続けているという。それに加え、中国有数の羊毛産業基地であり、石炭の他にも石油や天然ガスなどの天然資源がある。
こうした産業に支えられ、オルドスの人たちは急速に豊かになった。10年に中国で販売されたランドローバーの90パーセントはオルドスの人が購入し、市内では高級オフロード車をよく見かける。ある温州の企業家が、オルドスでお手伝いさんを雇ったところ、そのお手伝いさんはトヨタのオフロード車で現れ「お金には困っていないが、家にいても退屈なので暇つぶしに働く」と説明したという。
一方で、オルドス市では富裕層をターゲットにおよそ50億元(約620億円)かけて一戸建て高級住宅地が建設されたが、入居者がおらず、「ゴーストタウン」として問題になっているという面もある。