中国では、人材や資金の流出が大きな社会問題になっている。例えば2009年までに海外に留学162万人のうち帰国した人はわずか49万人。全体の3分の1に過ぎない。
だが深刻なのは人材流出だけではない。中国中央銀行が最近発表した調査によると、90年代以降、汚職に手を染めた政治家、企業幹部、公安幹部など、約1万8000人が海外に持ち逃げした資金は、約8000億元(9兆9000億円)ということが明らかになった。
また今年3月、公費で車に乗ったり、旅行や飲み食いをしたりする政治家の実態が調査され、深刻な現状が浮かび上がった。これによると中国は毎年9000億元(約11兆円)を費やしているというのだ。国防予算が約5300億元(6兆6000億円)だから、それをも遥かに上回る額だ。
今の中国社会は様々な問題に直面しているが、特に大きな問題は貧富の差が余りにも大きいということ。富める人はどこまでも富み、政治家は私腹を肥やし、貧しい人はかなり貧しい生活を強いられている。それが社会の不安感、不信感につながっている事は間違いない。
こうした不安感が、さらに資金の流出を後押ししている。多くの富んだ人たちは、自分の財産と安全を守るため、海外移住を選択する人が多いのだ。招商銀行の調査によると、1000万元以上(1億2000万円)の資産を持つ富豪のうち、約74%が既に移住しているか移住を考えているのだという。ある富豪は「私たちは貧富の差についてある程度責任があると思う。貧富の差がさらに拡大し、金持ちに対して恨みが向かわないうちに、資産を海外に移してしまうのが良い選択だ」と話していた。
中国は、急速な経済発展を遂げ、巨万の富を生みだしたが、一方で人々の将来に対する一般の人々の不安も膨らむ一方だ。