「株主軽視にもほどがある」
別の高齢株主も「20分前に会場に到着したのに、混雑のために、ホールに入れたのが10時3分。開会に間に合わなかった。株主軽視にもほどがある。年配者が長い時間入口で待たされているのを、いったい、どう考えているのか」。
片山社長は「本当に申し訳ありません」と陳謝。「年配の方々を大切にするのはシャープの根本姿勢。来年は必ず…」と繰り返した。
さらに追い打ちをかけたのが、堺工場の工場見学問題。これは最新の設備を備えた工場を株主に見てもらおうと、シャープが昨年実施したイベントだった。質問に立った株主が「定員100人のところに5000人の応募が殺到し、抽選もれで見学できなかった」と暴露した。そして、追いうちをかけるようにこう言った。
「トヨタは工場見学に3万人の応募が殺到したとき、3日間の予定を1カ月間に延長して全員を見学させたというじゃないですか。こういうのがブランド力というんじゃないですか。それに比べてシャープはなんですか?」
工場問題はこれで済まなかった。運よく見学できたという別の株主は「見学に役員が一人もきてなかったのはどういうこと?」と指摘し、株主軽視の例として示した。
業績以外のことで猛攻撃。片山社長は「ご指摘を真摯に受け止め、工場見学、入場の混雑の問題は必ず解消したい」と約束した。液晶テレビの価格低下で苦戦を強いられるシャープ。震災の影響などで仕方のない面もあるが、株価低迷に不満を抱く株主の鬱屈した不満が思わぬ形で暴発したようだ。
一方、本業については、「これぞ、というヒット商品がない」「震災後も株価が回復しない」という厳しい意見も出たが、結局、役員賞与支給や取締役11人の選任など5件の議案についても、あっけないほどシャンシャンで可決した。
終わってみると、総会は昨年より30分以上長い、2時間余り。閉会が告げられると、会場で隣に居合わせた高齢の男性株主は、腕時計をちらっとみて「今年は、えらいきつかったなぁ」と苦笑いをしていた。