再放送の「神」
「再放送を流しといたら、視聴率が取れるんですから、こんないい話はない。制作費も要らないし、羨ましいかぎりです」
あるテレビ局員がそのように漏らした。それを証拠に、09年には水戸黄門の再放送が7.2%で、1日の全プログラムの中で最高視聴率となったこともあった。関西地区では10%を超えていることもあるほどだ。再放送では「神」として崇められているのだ。
必死の思いで制作してもなかなか見てくれないのに、再放送はそこそこ見てくれる。完全な矛盾がそこには存在する。前出のテレビ局員は「時代劇のストーリーを、全部覚えている人なんていませんよ。まぁ、大体いつも同じ内容だし…」という。
極論すれば、いつもの黄金パターンである「勧善懲悪」という金型に沿っていれば、あとは何でもいいのだ。再放送ばかりでも、CS放送の時代劇の専門チャンネルが存在し、人気を博しているのも、そうした理由からだ。
だからと言って、制作費削減ばかりでは、本当の名作は生まれないのではないか。多くの文化を生み出したテレビだが、本当にさみしい時代が来た。