国に帰らない中国人留学生・人材流失が深刻

 「華僑華人研究方向(2011)」が発表され、多くの中国人留学生が国には帰らず、多数の富豪が海外に移住しているという状況が、ますます深刻になっていることが明らかになった。

 報告書によると、1979年の改革開放から09年まで、海外に留学した人数は約162.07万人で、このうち帰国した人は総勢49.74万人とわずか3割に過ぎない。一方、留学を名目に海外にいる人は112.34万人で、このうち89.29万人が、先進国で修士や博士として研究に従事していた。また留学をきっかけに、海外に移民した人は総勢60万人以上に上った。

 こうした現状とともに、富豪の海外移住も加速している。北京出入国仲介機構協会のデータによると、2009年までにアメリカの永住権の取得を申請した人は、前年の倍に跳ね上がり、2008年には約500人だったのが翌年には1000人を越えた。

 こうした海外移住の問題は、多くの優秀な人材が流出し、中国国内では「人材の空洞化」の危険性があると問題になっている。

 一方で、国に帰ろうという動きも徐々に見え始めている。その原因はアメリカ国債危機をはじめとして、国際経済が不安定になってきたことや、各国の移民政策が厳しくなったことが挙げられる。ある調査によると帰国した中国人のうち約90%が、経済情勢を理由に選んでいる。また中国政府も「千人計画」という政策を打ち出し、留学生が帰国する際には、戸籍の面などで優遇が受けられるなど、海外流出を防止するために動いている。

 いずれにせよ、中国は昔から移民大国だ。改革開放以来、30年間に海外に移住した人は約450万人。現在、世界中にちらばった華僑は約4543万人に上るとみられ、この数は世界第1位だ。

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