ハリウッド・ドリームの先にあったもの ― 田村英里子さんインタビュー

7年越しの努力の末、ハリウッドで掴み取った成功


女優・田村英里子さん
 2000年、単身渡米し、アメリカ・ロサンゼルスでの生活を始めた田村英里子さん。女優・歌手として日本では誰もが知る彼女が、11年間の芸能界でのキャリアをあっさり捨てて渡米したことに、日本中の誰もが驚きました。

 田村さんは渡米前からスティーブン・スピルバーグ監督の『メモワール・オブ・ゲイシャ』(邦題『SAYURI』)のオーディションを受けたり、アメリカへ1ヶ月間の語学留学もしていました(著書「ハリウッド・ドリーム」より)。しかし、渡米の決意から事務所を辞めるまでに要した月日は、約2年間。27歳の春、やっと日本での芸能活動に終止符を打ち、ロサンゼルスへ旅立ちました。

 2、3年すれば道は開けるだろうと考えていたそうですが、現実は非常に厳しいものでした。英語を学習するための語学学校、演技を学ぶためのアクティング・スタジオに通い、同時並行でエージェント探し。アメリカではエージェントに登録しないとオーディションを受けることもできないのですが、俳優が掃いて捨てるほどいるハリウッドでは、エージェントを持つことすら至難の業です。何とかエージェントを持つことができたら、今度はモデルやCMの仕事をしつつ、ドラマや映画のオーディションを受け続ける日々。渡米から約7年もの間、希望は数知れず打ち砕かれ、自信を喪失する日々が続いたそうです。しかし、彼女はあきらめませんでした。

 知名度ゼロの状態で活動を始めてから、7年後の2007年9月。最大のチャンスが訪れます。アメリカ全土で放映されていた大人気ドラマ『HEROES/ヒーローズ』シーズン2で、ヒロ・ナカムラの恋人役に抜擢されたのです(日本人がアメリカの3大ネットワークのテレビドラマシリーズに於いてヒロインを務めることは史上初のこと)。この役がきっかけで、田村さんは全米での絶大な知名度を獲得。その後、映画『ドラゴンボール エボリューション』や人気ドラマ『リーパー』のシーズン2など、話題作に次々と出演できるようになりました。現在、彼女は今後の活躍が最も期待される日本人女優として、アメリカで注目を集めています。

運命の扉が開いたドラマ『HEROES/ヒーローズ』


米大人気ドラマ『HEROES』のキャストたち
 ハリウッドで女優として成功するという、アメリカでもほんの一握りの人しか縁がない「ハリウッド・ドリーム」を体現した田村さん。彼女の活躍は、大きな衝撃をもって日本でも報道されました。
 『HEROES』に出演してから、田村さんの生活はどのように変化したのでしょうか? そしてそもそも、日本で充分なキャリアがあるにも関わらず、なぜハリウッドへ挑戦する道を選んだのでしょうか? 現在ロサンゼルスに住む田村さんに、今だから話せる本音を語っていただきました。

―現在、アメリカでの最新の出演作は何ですか?
田村:「今まさに放送中なのは『リーパー』のシーズン2です。クリスティンという役で、主人公の1人、ソックの恋人役として出演しています。そして、次は映画の出演が決まっています。」

―アメリカでのブレイクのきっかけはドラマ『HEROES』ですが、出演後、生活はどう変わりましたか? 
田村:「それはもう、がらっと変わりました! 『HEROES』のシーズン2に出演したのが約2年前ですが、アメリカはもちろん、他国に行っても街で声をかけられるようになりましたし、ファンレターがアメリカ中から届くようになりました。それまでとは天と地の差ですね。ハリウッドは成功するのが難しい分、競争を勝ち抜いてメインキャストに選ばれた人には、賛辞を惜しみません。これがアメリカン・ドリーム、ハリウッド・ドリームなんだと、肌で感じています。」

―『HEROES』ではマシ・オカさん演じるヒロ・ナカムラの恋人役ですが、マシ・オカさんとは日本文化の表現について話し合ったりされたのですか?(※シーズン1のラストで、時空を超える能力があるヒロ・ナカムラは、1671年の日本にタイムスリップ。そこでヒロが出会い、愛するようになる女性が、田村さん演じる刀鍛冶の娘・ヤエコです。)
田村:「『HEROES』はアメリカのドラマなので、日本の文化をアメリカ人に分かりやすいように表現されています。マーシー(マシ・オカ)は日本人ですが、子供の頃からアメリカで育っているので、もう精神面から本当のアメリカ人。だから、現場で日本人は私1人でした。ヒロの同僚のアンドウ・マサハシ役の俳優さんも、韓国系アメリカ人です。現場はとてもインターナショナルな雰囲気でした。日本の文化に限らず、キャストのみんなとは多くを話し合い、コミュニケーションをとりました。」

―アンドウ君の日本語の発音は、最初は違和感があるのですが、キャラクターに愛着がわくと「あれでなきゃアンドウ君らしくない」と思うようになりました(笑)。とても良い味が出ている俳優さんだと思います。
田村:「そうですか? よかった(笑)。アンドウ役のジェイムズも仲の良い友人で、一生懸命日本語の台詞を練習して、撮影に臨んでいました。『HEROES』の現場もとても良い雰囲気で、楽しかったです。」


『HEROES』撮影現場での田村さんとマシ・オカさん(左端)、スタッフたち

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