ヴェルサーチ日本撤退の裏側【2】

偉大な兄を超えられなかった妹


ランウェイを歩くジャンニ・ヴェルサーチ氏、右は妹ドナテラ氏
 亡き後を継いだのが、妹のドナテラ氏と、兄サント氏。デザイン部門を統括するようになったドナテラ氏は学生時代から兄ジャンニ氏の工房でデザインを手伝い、兄のヴェルサーチイズムを最もよく知る人物であったはずだった。しかし、偉大な兄の貯金はいつまでも続かなかった。

 栄枯盛衰のラグジュアリーブランド業界で生き残っていくのは並大抵のことではない。1980年代にはフランスを中心にブランドの買収合戦が展開された。だが、巨大グループの中に入ることなく、一本独鈷の道を選んだヴェルサーチ。しかし、不世出の天才がいてこそ舵取りができた巨大ブランドは、もはやドナテラ氏の手には負えなくなってしまった。世界に出ることを夢見ながら兄弟が工房で助け合いながら作業した光景は、もはや思い出でしかなかった。

 「メトロポリタングラマー」。そう標榜されるドルチェ&ガッバーナが台頭。ヴェルサーチとはキャラが被るだけに、さっそくライバルに客を奪われ始めた。デザイン、経営の両面で立ちいかなくなったヴェルサーチ家は、近年は外部から経営者を招へいしてきたが、もはや手遅れだったようだ。

1 2
よかったらシェアしてね!
目次
閉じる