デザイン小噺をお一つ

 今年最初の授業で、僕は学生に「2010年は気楽に楽しくいきますネ!」と笑いながら宣言した。なんと言っても1月1日にそわそわと寄席に出かけ、朝から4時間ほど能天気に笑い続けたからだ。

 東京の寄席の中で、唯一の木造建築が放つほっこりした気配によるものかもしれないが、新宿の裏通りのこの寄席の周りは空気が飴色をしている。内部も江戸にタイムトリップできるインテリアの雰囲気があり、自然換気も出来てフレッシュエアーがすがすがしい。高断熱、高気密のどこかのサッシメーカーでおなじみの、密閉型都市生活に慣れた現代人には新鮮かもしれない。(冬は特に2階席はかなり寒いが)



 客席は1階正面にクッションの比較的良い劇場用の椅子席と、左右に靴を脱いで上がる桟敷席、2階にまた座布団の敷いてある座敷と、その背後に一段雛壇になっていてとても寝られないほど硬い椅子席がある。

 アーこんな椅子なら大学生も授業で寝ないか?と妄想したりして……正月の寄席は顔見せ興行で、一人一人わずかな時間話すと次々と入れ替わる。そこの寄席は全部で3部まであったが、通しでずっと朝から晩までいるとすると(でも実際午後2時で1回入替があったが、物好きな僕は2日間通いすべて制覇してしまった)50人もの落語や芸が見れるというシステムになっているわけでお得な気分。おめでたい独楽回しやレトロなマジック、伝統的な江戸の蕎麦ネタなどに舌づつみをうった後、TVでおなじみの噺家さんが登場し、日本の家庭の夕食の話がネタに出た。

 一般的に供される夕食のメニューで、よく登場する1位~3位までのメニューは何かと想像つきます? これもうちの学生に新年聞いてみたところ、大体同じ答えが返ってきた。(煮物なんて古風な答えも出てきが……)噺家さんによれば、正解は3位がパスタ、2位が唐揚げ、1位がカレーなんだそうである。なんと昭和の給食の献立と同じではないか!! 「こんなに柔らかいものばかり子供に食べさせているなんて、噛むと言う行為が脳の発達につながるのに、こんなメニューじゃいけませんやネ」と嘆いていた。僕も100%同感!!と膝をポンポン叩いた。

 デザインの世界と食事は関連が深い。たとえばインテリアデザインを例にあげれば、どんな料理を作るかによって自然とキッチンのデザインは変わってくるし、照明や空調も考慮しなくてはならない。もちろん食事だけでなく、睡眠、入浴、運動、仕事、ファッション、遊びなど、どんなライフスタイルをとるのかでインテリアのデザインは変わってくる。カレーや揚げ物、パスタをメインに作るキッチンと、原則的に加熱処理を行わない料理方法のローフードではかなりデザインが違ってくるはずだ。食とライフスタイル等についてはまた次回から徐々にお話していくことにして……お後がよろしいようで……今日はここまでに。

ミニコラム【プロフェッサーの呟き】

 このデザインコラージュではデザインとライフスタイルの関係性に着目した様々なモノ、コトや場を取り上げ、ショートショートでお話するつもりです。そういえば、新年寄席で仕入れたネタで学生を笑わせようとしましたが、ぜんぜんスカでした……まだまだ研究が必要なようです。

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