何語を教えるか?【1】

 『日本列島総ショールーム化計画』をあらゆる業種で推し進めるしか、日本が子や孫の代まで、先進国の中で生き残っていく道はないのでは? と考えています。

 どのように展開するかの方法論(各論)につきましては長くなるため今回はさておくとして、『日本列島総ショールーム化計画』を遂行するにあたって、整備しておかなければならない重要なポイントの1つに、学校での外国語教育があります。

 英語が、単なる一言語でなく、地球上のあらゆる国々を結ぶ世界語(グローバルイングリッシュ)としての地位を獲得したため、非英語圏の国民は、母国語以外に英語も身につけるという過酷なハンディを背負わされ、英語圏の国民は、非英語圏の国民が使う亜流の英語を許容し歩み寄る姿勢を求められる時代になりました。

 イギリスを例に挙げますと、これまでイギリスでは、「間違った英語が世界のあちこちで増殖するのを止めなくてはならない」とする捉え方が主流で、中国人の話す英語はチングリッシュ、シンガポール人のはシングリッシュ、インド人のヒングリッシュ、そして、我が日本人のそれはジャングリッシュなどと揶揄され、排除されてきました。けれども現在では、こうした世界各地の“お国訛り”を積極的に受け入れましょう、という認識が広がりつつあり、発想の転換が図られているようです。

 それどころか、非英語圏の英語教育熱の高まりを反映してイギリス人英語教師が世界中から引っ張りだことなっているあおりで、イギリス国内の学校では、自国民であるイギリス人の子どもに英語を教える教師が不足し、インド人教師がどんどん採用されているとか。背に腹は代えられない、といったところでしょうが、そうなると、やれ伝統的なイングリッシュだ、いやヒングリッシュだと、こだわっていられませんね。

 英語を話すインド人教師を積極的に活用しようとする動きは、他国にも及んでいます。韓国では昨年から、インド教師を大量に招聘して公立学校に配置する国家政策が実行に移されました。

 翻って、極東のとある島国では、小学校の授業で英語を必修化するのすらグズグズ煮詰まりません。世界の潮流とかけ離れた議論を繰り返すばかりで、なかなか現実的な打開策に着手しようとしません。

 日本の外国語教育は、すっかり遅れを取ってしまったのか……?
 いいえ大丈夫、まだ巻き返しが可能です。

 ここで、オセロゲームを思い起こそうではありませんか。黒に押され敗色濃く漂うオセロ盤を、一気に白にひっくり返して大どんでん返しを狙う方法が、あるのです!

 2010年4月26日付・日本経済新聞朝刊オピニオン面の、『領空侵犯』と題されたインタビュー記事をお読みになった方がいらっしゃるかもしれません。そこには、野村資本市場研究所シニアフェローであられる関志雄氏による、英語教育に関する提言が掲載されていました。「英語を全員必修ではなく選択科目にして、本当にまじめに勉強したい少数の生徒に対象を絞り、もっとレベルの高い英語教育を施して国際人を養成しては?」と述べる関氏に対し、インタビュアーである編集委員氏は、「劇薬である」との感想を付記しておられました。しかし、かねてより関氏と同様に考えていた私は、「その劇薬こそ、我が意を得たり!」とばかりに膝を打ちました。

 私の頭にあるオセロゲーム大どんでん返しの秘策とは、すなわち、「全国一斉にどこの学校も足並みそろえて英語を教える」という呪縛から、解き放たれること、であります。もはや世界は、英語「で」教える国が先んじており、英語「を」教えるという発想では勝てません。

<何語を教えるか?【2】に続く>

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