億万長者の“ゆりかご”

 中国は年々多くの億万長者を輩出しているが、出身地には大きな偏りがある。1999年から2009年に、中国の主要な大富豪ランキングに登場した人のうち、浙江、広東、江蘇の3省の出身者が計700人に上り、他省を上回った。中国南東部は中国億万長者の“ゆりかご”と言えそうだ。

 調査によると、一部の地域を除いた29の省と自治区のうち、億万長者を50人以上輩出した地域は11カ所だけだった。上位3省を見てみると、最も多い浙江省は330人、2位の広東省は197人、3位江蘇省は165人と圧倒的な数に。特に、浙江省の出身者は2位の広東省と比べ100以上も多いが、人口は広東省の6割に過ぎない。いかに多くの富豪を輩出しているかが分かる。

 次に、こうした人々がどこで“富を成しているか”を見てみると、長江デルタや珠江デルタなど南東沿岸部に集中していた。地域別では、広東省が最多で323人、浙江省308人、江蘇省185、さらに北京が180人と4位に続いた。事業内容は、やはりどの地域も不動産業が最も多く全体の3割を占め、他にはIT関連や金融投資などがいた。富豪の出身地と、事業を行っている場所はほとんど共通していると言える。

 数多くの富豪を生み出す“ゆりかご”。こうした地域が存在するのには歴史的な背景と、地理的な理由、政策面の理由が上げられそうだ。

 専門家によると、浙江省一帯は南宋(1127年~1279年)の時代から経済が発展しており、その後どの王朝でも経済の中心だった。(南宋時代は自由に商売することが認められたことなどから中国の経済や科学技術が最も発達した時期で、当時の経済量は世界全体の50%を占めたという)

 近代になっても、浙江省や広東省の経済活動は盛んで、広州や寧波などは、海外との重要な貿易港だった。また、これらの地域は経済特区など、早くから試験的に開放され、多くの外国資本が入ってきたことも、他の地域に比べ急速に経済が発展した理由となっている。

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