自分で掘るか中国から買うか(レアアース)

 今夏、尖閣諸島問題に関連して、中国がレアアースの輸出を制限し、日本はハチの巣をつついたような騒ぎとなった。実際レアアースがないと、もはや私たちの生活に必需品となった「液晶テレビ」も、「光ファイバー」も、「燃料電池」も、「永久磁石」も、そして「蛍光灯」ですら作れない。日本はそのレアアースの輸入の9割を中国に頼っているというから、日本中が震撼としたわけだ。

 しかし、何もレアアースは中国にしかないわけではない。実はレアアースは、まだ多くの国の地中に眠っており、以前は世界中で採掘されていた。有名なのは米カリフォルニア州の「マウンテンパス鉱床」で、1980年代には世界の半数以上のレアアースを産出していた。現在も同鉱床は大きな埋蔵量を誇っており、ほかにはオーストラリア、ブラジル、インド、モンゴルなどの地中にもレアアースは眠っているとされる。

 中国が主導権を握るようになったのは、その採算性の良さからだ。モンゴルとの国境に近い「バイユンオボ鉱床」は、レアアースの原料が地表に出ているような状態で、掘るのにコストがかからない。というより、掘らなくてもすでにそこにある。これによって採算コストの低下で市況価格が下がり、米国の「マウンテンパス鉱床」は、2002年に採掘休止に追い込まれた。

 要は「掘ればあるし、掘って掘れないわけじゃない」。この10月、日本はモンゴルとレアアース開発で、協力関係を強める方針を確認した。これまでは「掘ればあるのだが、あまりおいしい売り物にならないので掘らなかった」だけ。中国の売り惜しみで価格が吊り上がるなら、事業者はコストに見合う収益が得られる。困ったら「自分で掘ればいい」のだ。

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