人民元、2011年に大幅上昇の可能性も

 中国政府は現在のところ、国際的な人民元切り上げ要請をかたくなに拒んでいる。ただし、米国との貿易不均衡は深刻な程度まで拡大しており、切り上げ要請が鎮静化する気配はない。また、切り上げは中国にとっても、インフレ抑制に効果的という側面もある。圧力は強まり続けており、切り上げやむなしという発言も聞こえ始めている。

 中国人民銀行の盛松成・調査統計局長は同行の機関紙への寄稿で「為替形成メカニズムの改革を進め、人民元相場の弾力性を高めるべきだ」と指摘した。同時に「人民銀が外貨を大量に買ったため、通貨供給量が拡大してしまった」とも指摘し、元相場を事実上、ドルに固定することの弊害にも言及した。

 エコノミストの中にも、元の切り上げを予測する向きが増えているようだ。三菱UFJ信託銀行投資企画部の野口達哉氏はレポートの中で「人民元の切り上げは外圧の存在により実現する面もあるが、中国自身にとっても必要な改革である。人民元相場を円相場の歴史に照らし合わせて振り返ってみると、現在の人民元はニクソンショック後の円、つまり変動相場制への移行期にちょうど差し掛かっている局面と考えられる」と指摘。

 また、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントのジム・オニール会長もレポートで「(中国の輸入は増えているが)これが景気循環による改善にすぎない場合、中国はこれを構造的な改善にするための対策(現在の計画以上に大幅な為替レートの切り上げなど)を断行することが予想される。中国当局は2011年には人民元をさらに5%程度切り上げることをおそらく検討しているはずだ」と明言している。

 さらに、大和総研の金森俊樹常務理事も「ある中国政府関係者は非公式の場で筆者に(具体的なタイムスパンには言及しなかったものの)、『現在の諸事情に鑑みると、1ドル5.5元程度まではやむをえないかもしれない』と述べていた。~中略~中国が漸進的と言っている場合の切り上げペースは、およそ年5~6%程度ということになるのではないか。元の国際化との関係で、どこかの時点でもっとドラスティックな切り上げが行われるという別の可能性も排除できない」と述べている。

 2011年は、人民元にとって波乱の年となるのかもしれない。

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