幸せと金儲けは両立できるか?【1】


左から天野敦之、久米信行の両氏
 ゲームソフト会社、日興證券を経て、久米繊維三代目として家業を継いだ久米信行氏と、外資系コンサルティング・ファームや証券会社勤務を経て、個人事務所を設立した公認会計士の天野敦之氏のトークショー「人と一緒に幸せを創る!成幸者の仕事術」が先日、都内で開かれました。

 墨田区観光協会理事や、明治大学商学部の講師も勤め、「メール道」「ブログ道」(NTT出版)の著書でも知られる久米氏と、異業種とのコラボレーションセミナーの開催など、公認会計士の枠を超えさまざまなフィールドで活動中の天野氏が、自身の経験から『人を幸せにする=ビジネスとして成功する』ためのユニークなトークを紹介します。

僕たちのネガティブな(?)過去

 天野氏 僕は会計士ですが、会計士らしい仕事はほとんどしなくて、『人を幸せにする会社を作る』をミッションにして、経営者のコンサルティング、経営者、コンサルタントを育成する塾、セミナー&ワークショップ、講演会、執筆などをやっています。

 某証券会社にいた当時は、精神的にも肉体的にもぼろぼろでした。2~3時まで働かされている肉体的な辛さ以上に精神的にきつかった。金融の仕事は、経済のインフラであるお金を扱う大変重要な仕事ではありますが、それを超えてお金を儲けようとすると、どうしても誰かから奪う、誰かの犠牲の元に得られることやらざるを得ないところがありまして、こんなことをやって何になるのだろうと鬱々とした状態が日々続き、今じゃ考えられないですが、1日で一度も笑わないという日もずっと続いていました。鬱病に近いような状態でぼろぼろだったときに出会ったのがヨガでした。

 始めた目的は崇高なものではなくて、身体にいいものを何かやろうと思っただけ。でも体がほぐれてくると、心も柔らかくなってきて、凝り固まったものがほぐれていくうちに、いろいろな気付きがあり、幸せって外に求めるものじゃなくて、内にあるものだなって気付いたんです。

 会社の近くのヨガスタジオに通っていましたが、ヨガで心が満たされて、会社に戻って残業すると、そのコントラストの激しさに驚きました。ヨガの時間は、周りは幸せそうな顔の人たちばかりなのに、会社に戻るとものすごい形相でみんなが必死にお金儲けの事を考えている。給料もいいし、お金もモノも一杯あるけど、全然笑顔がないし、幸せを感じられない。目の前の人を笑顔にさせてその対価をいただく、これがビジネスの原点じゃないかなと…。あまりに当たり前のことですが、その当時の僕にはそのことがすごく衝撃的でした。

 会社にいる人は、根はみんないい人です。でも利益を得るためにぎりぎりのこともやらなくちゃいけなくなる。それではいけないと気付いた僕は、会社の中でもいろいろ試みましたが、そういう社員は当然、会社の中でつぶされますよね。上司から「人を幸せにしたかったらNPOに行け」とまで言われて、金融のプロだったら金融だけをやれと対立してしまったわけです。

 その結果、左遷させられましたが、異動したことで時間的な余裕ができ、知り合いの経営者の支援とか、情報を発信したりとか、社外の活動を始めることができたんです。その中でいろいろな出会いがあって、出版の話も出てきて、本を出したら共感してくれる経営者も増えて、さらに出会いが増えていきました。今では異動させてくれた上司に本当に感謝していますよ。

1 2 3
よかったらシェアしてね!
目次
閉じる