大空に野心をいだく中国の富豪たち

 ほんの2年前、鐘(ジュン)さんは頻繁にユーラシア大陸を横断する乗り物として飛行機を利用していたが、その時は飛行機の“エンジン”という概念さえはっきりとは知らなかった。そんな彼女が今、ある専門会社を経営している。それはアジアの富豪たちがプライベートジェットを購入するため手助けをする会社だ。

 飛行機が1機売れる度に、彼女は30万ドル(約2500万円)から100万ドル(約8000万円)の収入があるという。

 中国人の財力が増すとともに、プライベートジェットを購入できる層も増えてきた。現在、中国人富豪の数はアメリカに次ぐ世界第二だ。英国のジャーナリスト・フージワーフ氏(中国名「胡潤」)が始めた中国長者番付(「胡潤百富」)によると、中国で1億5000万ドル(約120億円)の個人資産を持っている人はあわせて1363人、また10億ドル(約800億円)以上の資産を持つ富豪も189人に上るという。鐘さんはこれに対し「お客がさらに拡大していく良い機会だ」と見ている。

 先進国のプライベートジェット市場では、2台目の購入を楽しむ人も多い。「中国ではどのお客も新しいモデルの飛行機を求めている」と鐘さん。プライベートジェット機の販売会社はみな口をそろえて“中国大陸からやってくる客は日に日に増加している”という。5年前、香港には10機のビジネスジェット機さえなかったが、今では40機にまで増えた。

 中国で新しく起こったジェット機ビジネスに携わっている事は、鐘さんにとって単なる偶然かもしれない。だがインターネットのサイトを経営する友人が、飛行機を売ってほしい人がいるという連絡があった時、彼女はとても興味を持った。この商談はまだ成立していないと言うが、彼女は潜在的なビジネスチャンスを感じたという。

 一部の人からすると、ジェット機を購入するためにかなり待つことが大きな問題だという。「新しいジェット機になると納品まで3年間はかかる」と鐘さん。世界的な経済不況の中で、ビジネスジェット機産業は多くの顧客を失っている。待つことに耐えられない新しい客からすれば、お金を払ってでも順番に割り込みしたいと思うだろう。100万元(約1300万円)から200万元(2600万円)支払えば良いそうだ。そして、鐘さんは顧客にこう言う。

 「来月にはジェット機を手に入れられますよ」

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