高級腕時計を買うなら針の色で選ぶ

ブレゲが生み出し、セイコーが守り続ける匠の技


 時計好きであれば「ブレゲ針」の名を聞いたことがあるだろう。18世紀にフランスで活躍した天才的な時計職人、アブラアム・ルイ・ブレゲの時計にあしらわれたことがその名の由来。ただ一般的に、針先から全体の約4分の1下がった位置にある穴を特徴として記憶されているようだ。だが、専門家によれば、ブレゲ針の本質はその仕上げにあるという。

 針は鉄を熱し、急激に冷ますことで強度を出す。ところがこれだと脆くなりやすい。その欠点を補うために、火に入れるのではなく、火の周囲で炙るようにあてることで粘り強さを出す。日本刀における焼入れ、焼き戻しという手間のかかる工程を経るわけだ。この熱の化学反応の結果、針は酸化膜で覆われ、鮮やかな青へと変わる。変形しにくいという硬度に加え、さらに白地の文字盤に映える美しさも生んだ。


 それ以前にもこの製法は用いられていたという説もあるが、技術として体系化したのがブレゲだったためか、いつかブランド名が代名詞となる名誉を獲得したわけだ。アンティーク時計市場では、デザイン、ムーブメントはもちろんのこと、秒針の色まで審美の対象となる。自らのコレクションとしてはもちろんのこと、高く売れることも含めて覚えておきたいストロングポイントだ。

 国産でこの工程を採用しているのがセイコー。テンパー針と呼ばれ、グランドセイコーやクレドールの上級クラスの機械式時計に使われている。元祖にも引けを取らないその職人技は、世界的にも高評価。実際に海外ロレックスからグランドセイコーへ買い換える海外のエグゼクティブが少なくないそうだが、こうしたディテールも理由のひとつといえそう。

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