嵐山の水辺、星のや 京都のおもてなしの粋

 世界中の高品質なホテルが加盟していることで有名なスモール・ラグジュアリー・ホテルズ・オブ・ザ・ワールド。日本での加盟ホテルはただ5つ。そのうちの一つである「星のや 京都」を桜の嵐山に訪れました。

 星のやへのアプローチは、大堰川を遡る渡し舟。嵐山渡月橋を渡ってすぐの専用舟着き場から嵐峡の雄大な景色を眺めながら進むこと10分。この優雅な時間から、すでに星のやへの旅がはじまっています。


専用の渡し舟で 星のやへ

 江戸時代の豪商角倉了以がここの地をライブラリーとして、居を構えてから100年の時を経た数寄屋造りの建物。それが、京都の専門の職人の手で見事に美しく甦っています。内部空間は、京唐紙や工芸品をモダンにアレンジし、快適な寛ぎの空間となっています。

広縁付きの和室から桜を望む

 いくつかの棟に分かれた客室の中で、月橋ダブルは、ベンチソファを備えた寝室を挟んで、独立した書斎まであるゆとり。和室からの川面の美しさが印象的です。広縁付の和室に置かれたソファは神代杉から出来ていて、すこぶる座り心地よく、ちょうど目線の位置に来る大きな窓からの借景は見事なものでした。

神代杉が描く曲線が美しい家具

 星のや 京都では、ゲストが自由に食事を楽しめるようにという心遣いから、宿泊のなかに食事を含めていません。例えば、同じ川辺にある「京都吉兆」に小舟で案内してもらうというようなことも可能。しかし、星のや自体の食事も大変素晴らしいものでした。四季の旬素材を多彩な調理法や食材の組み合わせて美味しさを引き出すデクリネゾンという手法で供するとのこと。

彩りもよく素材感が出ているお料理

 味と彩りが楽しい八寸、お造りは京都らしい川鱒やぐじ(甘鯛)、旬の筍は、焼き物や煮物など調理法を選べ、桜の葉を敷いて焼いた魚に、〆は手打ちの蕎麦で。完成度が高い1品1品をゆっくりと味わえる食事でした。

 さて、ここで楽しみにしていたのは、ゲストが楽しめる京あそびの体験の数々。その中からかねてより一度体験したかった聞香(もんこう)を選びました。聞香とは香道のやり方の一つで、心を傾けて香りを聞く(嗅ぐ)ことです。一連の作法に則って、暖めた炭に寄せた灰の上に銀葉と呼ばれる雲母を置き、その上に香木を載せます。手を添えて、伽羅(きゃら)の香木の香りを吸い込むと、胸いっぱいに広がって、匂うというより身体で感じるという心持ち、何より優雅な体験でした。


聞香は香りを味わうという感じ

 敷地を歩いているとスタッフから挨拶を受けて、空間は非日常でありながら、どこかお招きに預かったような感じがします。水辺の私邸で受けるおもてなしの粋、星のや 京都はそんな宿でした。(星のや 京都:http://kyoto.hoshinoya.com/)

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