スペインの名店エル・ブリ、最後のお相手は?


 この夏、7月末、その賞賛を浴びたスペインの名店は幕を閉じようとしています。ミシュランの三ツ星、世界で最も予約が取れない店、数々の伝説に包まれたレストラン「エル・ブリ」。私は実は行ったことがありません。まず予約も取れなかったと思いますが……。フェラン・アドリアの「エル・ブリ」は、バルセロナから車で約2時間のロサスという町にあります。このサイトをご覧の読者でその料理を味わわれた幸運な方はどれくらいいらっしゃるのでしょうか。


 なぜ、私が「エル・ブリ」の話をするかというと、以前にこのコラムでも書いた“若々しさと成熟さ”の2面性を持つ至高のシャンパーニュでご紹介した2002年のドン ペリニヨンのヴィンテージ・ティスティングで、ドン ペリニヨンとエル・ブリの最後の競演の話を聞いたから。

 ドン ペリニヨンの醸造最高責任者リシャール・ジェフロワとフェラン・アドリアとのコラボレーションは、今年の5月6日一夜限り。私が飲んだ2002年も含めて1969年、1973年、1976年、ロゼ1990年、1996年と全部で6種類のヴィンテージと、エル・ブリは50人のゲストに50人のシェフが4000ものステップを踏んだ珠玉の47皿が供せれたとのこと。1皿目は「サトウキビ:モヒート-カイピリーニャ」。その他「アスパラガスと味噌」「海苔とレモン」というように、日本料理にインスパイアされた味覚のマリアージュも。




 さて、7月末に営業終了した後、レストランはその歴史に幕を下ろし、再開はないとのことなので、この5月の一夜は世紀のお料理と究極のヴィンテージ シャンパーニュ、ドン ペリニヨンとの最初で最後の競演だったわけなのです。 決まっているのは2014年にガストロノミーだけではなく、デザイン、アート、建築などクリエーションの発信基地と文化交流の場を造るべく「エル・ブリ基金」が立ち上がるということ。ここでも、「創造の自由」を信念として共有するドン ペリニヨンが協賛をするらしい。

 雄は雄を知る、いや最高のガストロノミーとシャンパーニュはやはり恋愛関係に例えるのがふさわしいかも。シルキーな泡をたてる一杯を傾けながら、遠くスペインに思いを馳せたのでした。

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