負債618億円を背負い、倒産の危機にある安愚楽牧場。高配当をうたい、TVCM、新聞広告などで約3万人の出資者を集め、和牛預託商法と言われる企業では唯一生き残り成功モデルとも言われてきた。しかし、その内実は火の車だった。同社を仕切ってきたのが女社長・三ヶ尻久美子氏。経歴も定かではなく、表に出てこないが、その一端が伝わってきた。
堅実経営?
安愚楽牧場の東京オフィス。張り紙が貼られ、
人気もなかった
一昨年に横浜市内で行われた安愚楽牧場主催のパーティーで、同社の三ヶ尻久美子社長が200人以上の出資者を前にして語ったのだという。出席者の一人は「これだけしっかりした方が社長なら、安心だ」との思いを強くしたそうだ。
三ケ尻社長は、「前社長だった夫の跡を受けた」(ある出資者)という話もあるが、まったくその経歴は表には出ていない。出資者の目には「出資者を大切にする利発そうな経営者」と映ったそうだ。
こうした出資者をつなぎとめるためのパーティーは、何年かに1度は行われていたそうで、出資者は要望を出したり、「株主総会」「懇親会」のような場でもあったそうだ。三ケ尻社長は出資者を邪険に扱うことなく、意見や要望には謙虚に耳を傾けていたという。
しかし、パーティー開催は一昨年が最後だったという。昨年は一転して、宮崎県の口蹄疫問題、そして今年は東京電力の福島第一原発事故にも見舞われて、負債は618億円にまで拡大し、取引を停止し見動きが取れない状態になってしまっていた。
それだけに出資者たちは「信じられない」「裏切られた」という思いを強めている。