主役不在の1年、クリスチャン・ディオールの苦悩

 仏高級ブランドクリスチャン・ディオールのデザイン責任者である、クリエイティブ・ディレクターが不在のまま、もうすぐ1年が経つ。天才ジョン・ガリアーノが去ってからも、好業績を誇るものの、ブランドの命でもあるデザインや伝統を守りきれるのかどうか。

皮肉にも売上高は過去最高の2011年


警察に出頭するジョン・ガリアーノ(中央右の黒い帽子)
 クリスチャン・ディオールグループの2011年の売上高は対前年比17%増の246億ユーロ(約2兆6400億円)、営業利益は同23%増の53億ユーロ(約5600億円)で、売上高は過去最高となった。

 ディオールにとって昨年は、3月にクリエイティブ・ディレクターのジョン・ガリアーノが一般の人に対して暴言を吐き刑事事件となったため解雇し、忌まわしい1年のはずが、フタを開けてみれば、企業としては過去最高の業績を記録した。

 ある高級ブランド幹部は「アシスタントデザイナーがカテゴリー毎に沢山いるので、回らないことはないでしょう。ただ、(クリエイティブ・ディレクター不在は)各カテゴリーの統一感が薄れてくると思われます」と話す。

 ガリアーノクラスの大物デザイナーともなれば、契約金は「年間で数億円になることは間違いない」(別の関係者)とも言われる。言いかえれば、それだけの人件費を払ってでも、ブランドにとって命であるデザインの責任者が必要だということを示している。しかし、1年も不在のままだ。

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