迫りくる欧州金融機関の格下げ

ウォールストリート・ジャーナルによると、多くの欧州金融機関が5月初旬にも格下げされる可能性がある。格下げとなれば、金融界への下方圧力が高まり欧州の金融危機回避に向けた政策効果が損なわれると欧州の金融機関は身構えている。

米大手格付け会社、ムーディーズは今年2月、欧州債務危機の影響とユーロ圏政府の信用力低下を理由に欧州16か国の114金融機関を格下げ方向で見直すとしていた。同社は5月初旬に結論を出す予定。S&Pとフィッチは既にこれらの銀行を格下げしている。

欧州の銀行は欧州中銀(ECB)が実施した3年物資金供給オペ(LTRO)により低利の資金を調達したことで、流動性危機はひとまず回避された。スペインとイタリアの銀行はLTROの資金で、債務危機が深刻化した昨年から利回りが上昇した自国の国債を重点的に購入したといわれている。

しかし、新興国経済の失速、米国経済の回復への失望感などで、スペインやイタリアなどの国債利回りが上昇したため、ユーロ圏債務危機問題に対する警戒感が再燃し、ソブリン・リスクに対するエクスポージャーを拡大してきた欧州の銀行に対する信認も揺らいでいる。

今回の金融機関の格下げはこうした危機的な状況で行われる。格下げとなれば、信用力の低下から資金調達コストが高まり、デリバティブ取引では追加担保の拠出が求められるなど、金融市場の波乱要因となる可能性もある。

よかったらシェアしてね!
目次
閉じる