蓄積する国債相場急落のマグマ

 国債市場で長期金利の低下が進んでいる。9日の債券市場で長期金利の指標となる新発10年物国債利回りは一時、0.845%まで低下し、約1年7カ月ぶりの低水準を記録した。国の借金は膨らみ続け、財政赤字が過去最大を更新する中、この奇妙な国債市場の静寂はいつまで続くのだろうか?

 日本経済新聞(2012年5月10日)は、「膨らむ金利反騰マグマ」と題して、国債市場の先行きに警鐘を鳴らした。それによると、「オプション市場では債券価格が下落すると利益が出る『売る権利(プット)』の残高が4月末に一時、約5年ぶりの水準にまで積み上がった」

 「日銀が今後1年間に買い入れる国債は合計43兆円に膨れ上がる。今年度の新規国債発行額の44兆円に匹敵する規模だ。仮に消費増税が実現せず、国債発行額がさらに膨らみ続けることになれば、日銀の買い入れが放漫財政を助長する『財政ファイナンス』と受け止められかねない」。海外投資家のプットの買いはまさにこれを織り込んでいるものだろう。

 焦点は金利反騰のタイミングだ。ソシエテジェネラル証券東京支店の島本幸治支店長兼調査本部長は「日本の財政状況は厳しいが、現在の国債相場は日銀の強力な支援によって支えられている状況。徐々に危険な状態にはなっているが、世界的な量的緩和による余剰資金が当面は国債相場を支えるだろう」

 「ただし、政治の状況をみると消費税論議が混迷。野田首相が〝白旗〟を上げることはないが、消費税上げのタイミングが先送りされる可能性が高い。一方、米国経済は循環的に緩やかな改善過程にある。欧州は選挙の洗礼を受けて、政治がリーダーシップをとれる態勢が整いつつある。米欧は時間をかけながらも、財政赤字改善に向けて着々と歩を進めていくだろう」

 「来年には気がつけば日本だけが出遅れている状況になりかねず、このタイミングで長期金利が上昇に、円相場は円安に転じる可能性がある」と語る。

 仮に国債相場が急落すれば、急激な円安が同時進行するだろう。円資産に傾斜した資産形成は転機を迫られている。

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