日本にこんなワインがあったのか~鳥居平(とりいびら)物語~

(第1回)「『鳥居平』との出会い」

経済ジャーナリスト 湯谷昇羊

 「2004年ものでいいワインがあるんだけど、買いませんか。一口100万円で500本購入できるというんだが」


 私の知人、大手証券会社の元副社長から声を掛けられたのは2005年頃のことだった。ファンドの形で募集しており、500万円―2500本が単位で、100万円ずつ5人で購入することができ、10年、15年と年数を経れば経るほど価値が上がるヴィンテージものワインという触れ込みだった。

 そのワインは元副社長の高校の同級生が醸造しているもので、ワイン造りを始めて3代になるという。私は「日本にそんなワインがあるのか」と思うと同時に、「飲んだこともないワインに100万円を支払う勇気はありません」と丁重にお断りした。それでこの話は消滅したと思っていた。

 2007年4月になって、元副社長たちと山梨にゴルフに行く話が持ち上がった。「せっかくだから、友人が経営するワイン工場を見学させていただいて、温泉につかって翌日ゴルフをしよう」というのだ。4月の山梨は桃の花が開花して、それは素晴らしい景色だという。知人たちは一も二も無く賛成して、5人で山梨に出かけることになった。

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