最近、身近でおいしいなと思ったワインの醸造家が全員、美しい女性醸造家だったので、こんなタイトルで書いてみます。
先ずは、このところの実力が出てきたと思われる国産ワインから。1人目は、一度、このコラムでもご紹介した“ドメーヌ ミエ・イケノ”の池野見映さん。
見ての通りかわいい女性ですが、たった一人で耕作放棄地だった土地を開墾することから始め、支柱を立ててブドウの木を植え、ワイナリーにまで育て上げたという情熱の持ち主。それは、自社畑100%で高品質なワインを造ろうという思いから。ワイン造りの過程も重力を利用して醸造をする完全グラビティ・フロー・システムを日本で初めて採用し、極力人工的な要素を排した自然製法をとっています。
池野さんのワインは、星野リゾートリゾナーレ八ヶ岳のレストランや試飲もできるワインショップYATSUGATAKE Wine houseで購入することもできます。私はフルーティなアロマの「ミエ・イケノ シャルドネ2009」が好きなのですが、「ミエ・イケノ ピノ・ノワール2009」も深みと繊細さを兼ね備え、肉料理に合わせていただくとなかなかのおいしさ。初ヴィンテージとは思えません。
2人目は山梨県明野にあるミサワワイナリーでお会いした若き醸造家三澤彩奈さん。
甲州市勝沼町のワインの名門、中央葡萄酒の長女として生まれ、ただいま甲州ワインを牽引する存在。とても愛らしい三澤さんですが、彼女もブドウから自分で作った高品質のワイン造りへの情熱はすごい。
収穫期には昼夜を問わず働き、テイスティングの場でもものすごく真摯にお客の言葉に耳を傾けます。きれのある爽やかさが立つ「グレイス甲州」、そして華やかなアロマに驚かされる「キュヴェ三澤甲州鳥居平畑」のおいしさには驚かされました。グレイスのワイン醸造では、葡萄の酸化防止にドライアイスを使って、亜硫酸塩の使用を極力抑えているそう。
彼女はドイツ人ですが、ドイツとイタリアでワイン造りに携わった後、タイにやって来ました。バンコクの郊外サムット・サコーンとホアヒンにワイナリーがあり、土壌改良、醸造の工夫、そして葡萄の選択などタイの気候に合わせてのワイン造りに注力し、パーカーポイントで高い評価を得た「モンスーンバレー」のワインを世に出しました。
会ったときに「ワイン造りがまだまだと思われているところからいいワインを造りだすのはクリエイティブな喜び」と語っていました。フルーティさのなかにミネラルを感じる白が私の好み。日本でもタイレストランを中心に提供されており、購入することができます。
さて、3人とも共通しているのはワインへの愛情。おいしいワイン造りのために努力をおしまないという姿勢です。美しさだけではなく実力を感じる女性醸造家達なのです。