安愚楽牧場事件は詐欺での立件を断念、過去の詐欺事件の結末は?

 4200億円あまりの投資資金を集めながら、経営破綻した安愚楽牧場の特定商品預託法違反事件で、警視庁などは元社長の三ケ尻久美子被告(69)ら旧経営陣の詐欺容疑での立件を見送る方向で検討していることが各紙の報道で明らかになっている。より量刑の重たい罪で裁くことが断念する見通しで、社会的被害を考えれば納得がいかないものがある。過去の大規模の「詐欺事件」の結末を振り返ってみる。

 まず、過去に明らかになっている被害金額の大きい事件の順に並べると次のようになる。特に4300億円の安愚楽牧場は突出しており、会長が顧客から刺殺される場面がTV中継された豊田商事の2000億円の2倍以上の額になっている。今年事件化したMRIインターナショナルも1300億円と被害額は大きいが、安愚楽には及ばない。

安愚楽牧場  4300億円
豊田商事   2000億円
八葉     1500億円
MRI    1300億円
L&G(円天)1260億円

 団体のトップは法律に則った量刑を受けているものの、被害額の大きさ、さらには被害者感情からすれば妥当かどうか、疑問に感じることもあるが、首謀者の最後は次のようになる。

◆安愚楽牧場事件 社長は特定商品預託法違反の罪で起訴済み(途中)

◆豊田商事グループ事件 会長は顧客に刺殺される

◆八葉グループ事件 会長は組織犯罪処罰法違反の罪で懲役9年

◆MRIインターナショナル事件 被害弁護団が米本部の会長を刑事告訴する方針(途中)

◆(L&G)円天事件 会長は組織犯罪処罰法違反の罪で懲役18年

 MRIはまだ決着はついていないが、当局が米国の顧客資産を差し押さえることができるかどうか、証拠の隠滅を防げるかどうか。また、故意性を証明できるかどうかにかかっている。


 今回の安愚楽牧場事件は、公表しているよりも、そもそもの牛の頭数が大幅に不足しており、破綻が免れないことがほぼわかっていた段階でも、まだ新規の募集を行っていたが、故意性を証明できないと捜査当局は判断した模様だ。

 また、被害弁済についても、途中経過は芳しいものではなく、被害対策弁護団の発表によると、東京地裁で行われた債権者集会を受けて、同牧場社長の三ヶ尻久美子氏の判明している資産約4500万円から追加分がなく、仮に投資額が1000万円とすれば、返金額は2000円になる見通しだとしている。

 財産は約5500万円で、資産売却の手数料などの支出が約1000万円となった。資産の内訳は、保険解約金が約2100万円、預金約580万円、現金約210万円、東電株500株、千代田化工建設株2500株、大阪ガス株1000株、山林(宇都宮、那須塩原など)約1300万円、腕時計約20万円となっているという。

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