JR北海道「民営化の限界」国会でも示す

 JR北海道による一連の事故、不祥事などの問題で、衆院国土交通委員会は22日、同社の野島誠社長らトップ3人を参考人招致し、レール検査データのデータ改ざんが8カ所あったことや、ATSを破壊した運転士を職場復帰させていたり、取締役会にOB役員を出席させていたことを明らかにした。また、平沢勝栄委員(自民)から、JR北海道労組と革マル派との関係も質問に上った。

 同社の運転士が9月に、ATS(自動列車停止装置)を操作ミスを隠ぺいするためにハンマーで破損させた事件で、北海道警が捜査を行ったが、JR北の小山俊幸常務は「破損行為に計画性がなかったこと。損害額が軽微で修理ができた、本人が深く反省をしたことで、刑事告訴はしなかった」と答弁した。

 さらに、この運転士は今も会社に残っていることが判明した。15日間の出勤停止処分を課され、現在は職場に復帰。列車に乗務する業務こそ、関与させていないが、列車運行に関わる準備や後片付けなどを担当させられている。

 また、JR北の乗務員について、アルコール検知器による飲酒点検を免除されていた社員もいたこともわかった。同社には約1600人の乗務員が在籍しているが、飲酒の習慣がない乗務員11人に対しては一切行っていなかったそうだ。しかし、この委員会の2日前から全員を対象に行うように変更したという。他のJRは全員が義務化されている。

 現場はもちろんだが、上もそうだ。週に1度行われる取締役会だが、ここに役員OBまでは出席し意見を述べている。オブザーバーとして出席し、これまでの経験や技術的な意見を聞くのだというが、内外から数多くの批判が出た模様で、今年の10月からは出席は要請していないのだという。

 2011年5月に発生した石勝線脱線事故では79人の負傷者を出した件で、中島尚俊社長(故)が、企業風土の改革に乗り出したとたんに、北海道小樽市内で遺体で発見された。遺書には「『お客様の安全を最優先にする』ということを常に考える社員になっていただきたい」
とあり、労使関係にも原因があるのではないかと見られていた。

 そのJR北には四つの労働組合がある。80%以上が加盟するJR北海道労組が最大組織だが、平沢委員は職場によっては他の労組をは話をしないように上から指示されていたり、結婚式にも出席しないよう指示されていたりすることもあるのだという。

 JR北もこうしたことは把握していることを明言している。

 野島誠社長は「組合と経営側との意見の衝突はございます。課題が出た場合には、議論を尽くし、真摯に事業の対応にあたっています」と答弁している。

 また、革マル派との関係について平沢委員から質問が出て、警察庁の種谷良二・内閣官房審議官は「押収した資料を分析すると、JR総連内に行使しうる立場に相当浸透している。北海道労組との関係の解明には鋭意努めている」と答弁したり、根の深さを感じさせた。

 ただ、委員会で取り上げた問題は表層であり、根本には国鉄民営化後の経営の問題がある。

 1987年の民営化後に、約1万4000人いた従業員を現在は約半分の7000人にまで絞り込んだ。社員教育は短期間、整備点検までコスト優先がまかり通り、もう搾り取るところがないほどに現場の疲弊は激しい。国も当初は株式上場をさせることを目指したが、現状では北海道単独で事業として成り立たせることは厳しく、現場(組合)と経営陣との溝は永遠に埋まりそうにない。

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