三菱地所レジデンスの最高峰マンションシリーズの「パークハウス グラン 南青山高樹町」が契約者への引き渡しを中止して波紋を呼んでいる。三菱地所×鹿島による、東京・南青山7丁目という高級住宅街に誕生するはずだった億ション。1億円台が最多価格帯で、最高で3億5000万円となっていた。実はこのマンションは3月に引き渡し、そしてバブル期の施行。業界的には避けた方が良いと言われる条件でもあり、不幸にも実証されてしまった。
三菱地所×鹿島でも引き渡しできず
大手デベロッパーの中堅社員は「地所の物件でこの結果は驚きです。また、建設会社は鹿島、竹中、大成、清水なら一応、信頼できるわけですが…」と驚いた様子だった。もちろん、立地と物件グレードに加え、さらに売主と施行主の会社名も信頼を後押しして購入した富裕層も多いことだろう。
原因はスリーブと呼ばれる配管を通す穴が施工図になかったために、そのまま作られてしまった。それが、インターネットの掲示板に匿名で告発された。
「部屋内は躯体打ち込み時に衛生などの縦の配管用のスリーブ入れ忘れによるコア抜き多数。地下はダクトや配管のルートなしにより、壁がほとんどなくなった様な所さえあります。全て、関電工。 強度なんてあったもんじゃありません」
書き込みのままなら、かなり工事が進んだ段階でやり直そうとした跡がうかがえる。もしも、早期に手を打てば、結果は違ったものになっていたかもしれない。
前述のデベロッパーは「見ていないので個別にはわかりませんが」とした上で、「大手ゼネコンでは、マンション建設より公共工事の方が利益も高く、工期を早くしたいという考えは当然持っています。一番、儲かるのは売主なのですから。現場はどういう状況なのかまったくわかりませんが、今の時代のように工期が集中しすぎると、人手不足であったり、熟練工がいなかったりということもあります。ただ、それでも、鹿島にあるまじきミスという他ありませんが…」という。
建設従事者が足りない上に、「パークハウス グラン 南青山高樹町」は、今年3月の引き渡し。俗に言う年度末の物件だ。建設業界は年明けから年度末は繁忙期で工事の追いこみでミスや労災も出やすい環境にある。さらに、もしも工期が延びてしまえば、もうひとつの懸案事項が今年に限っては出てくる。