名家のコレクションからモネ「睡蓮」が88年ぶり競売に

 米国の資産家でフィランソロフィスト(慈善家)のユゲット・クラーク氏の遺産である、モネの代表名画「睡蓮」が1926年以来88年ぶりに、クリスティーズのオークション(5月6日開催)に出品されることが発表された。予想落札額は2500万~3500万ドル(約25億~35億円)。名家クラーク家の最後の跡取り娘で資産家として晩年は不遇であったユゲット氏のコレクションを通して、奇しくも名家にもう一度スポットが当たることになった。

 ユゲット氏は、2011年5月に104歳でこの世を去った。父のウィリアム・クラーク氏は
鉄道、鉱山事業で富を成し上院議員として活躍した。ユゲット氏が相続した資産は、優に500億円を超えるとされる。

 ニューヨーク5番街に、42部屋ある大邸宅に住んでいた。また、サンタバーバラにも大邸宅を保有していた。父のビジネスパートナーだった弁護士との間に婚歴もあるがわずか2年で離婚している。ただ、私生活はほとんど知られていないばかりか、人前に出ることさえなかったそうだ。もっぱら、コレクションなど芸術活動に精を出した。その一つが、今回の睡蓮でもある。


モネ「睡蓮」(クリスティーズより)
 晩年の20年くらいは、がんなどの病気を患っていたために病院で過ごす日々だった。ここで、ひじょうに珍しい相続事件が起きる。住みこんでいるために、看護師は交代制で付きっきりで世話をしなければならないのだが、ユゲット氏は昼間の看護師と夜間の看護師や医師、弁護士たちに財産を譲渡しようとした。

 ただし、遺言書が複数存在したのだ。血縁や親せき関係こそあれども、顔を合わせたこともない親戚たちにも有利となる遺言書があったそうで、訴訟にも発展した。

 現金などは相続されているが、この「睡蓮」は相続人がいなかったために、公的な管理となり、換金されるためにオークション出品となった。

 名家が人目を忍んで集めた秘蔵コレクションが、相続というきっかけで出てきたこともあり、注目されている。

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