節税策「ダブルアイリッシュ」が今年で終了

 アイルランド政府は14日、アップル、グーグルなどグローバル企業の多くが採用する「ダブルアイリッシュ」と呼ばれる法人税の節税対策について、今後は取り締まりを行い、新税制が来年2015年1月から施行されることがわかった。AP通信が伝えたもので、これで事実上のグローバル企業が使ってきた抜け道がふさがれることになる。ただし、現時点でこの仕組みを採用する企業は2020年末まで適用を免れる。


 ここ数年はOECD諸国で、BEPS(Base Erosion&Profit Shifting)はG20諸国の財務大臣、中央銀行総裁などによって封じ込めが検討されてきた。

 APによると、アイルランドのヌーナン財務相は、2015年度予算案を議会に提出した際、税制改正を併せて発表。国内登記企業に対して、アイルランドを税務上の居住国とするよう義務付けることを述べたという。

 これは、業界的にいわれるダブルアイリッシュという手法を禁じたもの。これは、アイルランドに法人を置きながらも、管理する実態企業はタックスヘイブンなどの国にある場合は課税がなされていなかった。

 アップルを例にとれば、2012年だけで90億ドルの租税回避を行ったと米上院小委員会の調査で明らかになっている。米国に収めた納税額は60億ドルだといい、いかに巨額の税逃れを行っていたかがわかる。中心的な役割を果たした3社の仕組みとしては次のようなものになる。

・アップルオペレーションズインターナショナル(AOI)
アップルの最上位会社でアイルランドの法律下にある。

・アップルセールスインターナショナル(ASI)
海外での知的財産権を保有。ここがキャッシュが貯まる金庫番の役割に。
AOIの傘下にあり、同社に配当金を支払うことで、米国に現金を還流させない。

・ブレイバーンキャピタル
AOIの財産管理が主目的で、米国ネバダ州に所在。AOIがアイルランドで税金がかからないように米国籍にして管理している。

 まず知財権を保有するアイルランド企業のAOI、ASIの2社で海外利益を受け付ける。ただ、管理実態は税率の安くアイルランド国外にある米ネバダ州でブレイバーン社が管理しており、まさにダブルアイリッシュを使っていることがわかる。

 実はAOIの取締役は米国在住者。取締役会にも数回しか参加していない。ASIにいたっては、従業員がいない幽霊会社だった。

 アイルランドは過去にアップルの工場が誘致された。当初は減税措置が取られてはいたものの、実質的にはその後もアイルランド政府がアップルの行為を黙認に近い形で認めていたともされ国際的な非難の声を浴びるようになっていた。

 また、参考までに下図には、グーグルのスキームを示してある。アイルランド籍の2社で利益を受け取り、オランドの会社にパテント使用料を支払う、ダブルダッチの手法も合わせることで、海外企業での収益を節税している。


「税大ジャーナル」(2013年5月号)より

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