GPIFが世界の不動産投資の主役になる?

 日本のGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、世界の不動産市場で主要なプレイヤーの一つになるのではないかと注目を集めている。120兆円以上の運用資産総額を誇る世界最大の年金ファンドだけに、リスク性資産へ目を転じたことで海外不動産の購入に注目が集まる。

 GPIFの基本ポートフォリオは昨年10月に、国内債券35%、国内株式25%、外国債券15%、外国株式25%に変更された。よりリスク性資産で積極運用を目指していくことが確認された。

昨年11月末時点でのポートフォリオと運用額は次のとおり。

国内債券:49.61% 64兆9282億円
国内株式:18.23% 23兆8635億円
外国債券:12.14% 15兆8863億円
外国株式:17.41% 22兆7828億円

 日本国内の運用資金総額の上位陣にはズラっと、公的年金や準公的年金運用団体が名を連ねている。その下に続くのも、世界的な大企業ばかり。上位15位までのファンドでその運用資産総額は2兆ドルにも上る。GPIFが不動産投資を行えば、追随するファンドが出てくるのは必然的だと見られ、影響力の大きさは目立つ。


 GPIFはこれまで不動産を組み入れてこなかったが、世界の主要年金基金はほぼ不動産をポートフォリオに組み入れている

 例えば運用総額世界2位のGPFG(ノルウェー)は1.2%、他にも主要どころのABP(オランダ)は8.9%、NPS(韓国)3.7%、カルパース(米)10.4%と組み入れられている。

 GPIFの今後の動向については、英調査会社ナイトフランクが三井住友信託銀行によるブローカーの調査をまとめている。レポートによると、いくつかの特徴が見えてくる。

◆目的
・安定収入 56%
・多様性  31%
・インフレヘッジ 6%
・高リターン狙い 6%

◆組み入れ比率
・11~20% 33%
・1~10%  53%
・0%    13%

◆望ましい購入先
・アジア 18.8%
・北米  68.8%
・欧州  12.4%


 安定収入狙いで、10%程度を組み入れる。つまり12兆円程度が直接的に不動産保有するか、かもしくはREITなどの証券で間接的に保有するという予想だ。その際の望ましい投資地域としては、北米が約7割と圧倒的に高い割合となっている。北米の不動産そのものに価格の割安感はないものの、妥当性から見れば外れが少ない点などが評価されているのか。

 また、国内での不動産投資だが、これは各ファンドによって方針が違う。ノルウェーのGPFGは自国への投資はなく、ロンドン、NY、東京など世界の主要都市に保有。一方で、カルパースは米国に多数保有している。これは、自国の不動産マーケットの規模の問題でもあり、GPIFの場合は日本の規模、イールドギャップなどは無視をすることはできないだろう。一定の投資は行うかもしれない。

 ただ、北米の不動産市場においては懸念点もある。ただし、ニッセイ基礎研究所のレポートによると、カルパースは昨年の7月に「契約コンサルタントから米国内のコア不動産高騰で規定の物件取得アプローチが難しくなっている点が指摘された」とある。賃料の上昇は見込めるものの、価格が上昇期にあるために、警戒を要する時期でもある。

 カルパースは、LVT(借入比率)の上限についても、従来は60%だったが今後は50~55%に下げる方針を固めている。

 ナイトフランクはGPIFについて「今後3~5年間で無視できない存在のプレイヤーになる」と見ている。

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