ピケティの論を日本にあてはめてみる

 富裕層や高所得者の間で話題になっている「21世紀の資本」(トマ・ピケティ著)だが、日本では約13万部、世界中では約150万部のベストセラーとなっている。そのピケティ氏がこれまでに集めた調査データはサイト上で公開されており、日本のデータを簡単に見てみることにする。

 データは「THE WORLD TOP INCOMES DATABASE」(WTID)で公開されており、最新のデータは2010年まで収集されている。まず、基本的な2010年のデータは次のようになる。
 
・トップ1%が占める所得割合9.51%
・トップ0.01%が占める所得割合0.68%

・トップ1%が占めるキャピタルゲインに占める割合10.44%
・トップ0.01%が占めるキャピタルゲインに占める割合1.03%

・トップ1%の平均年収2145万円
・トップ0.01%の平均年収1億5423万円

・トップ1%のキャピタルゲイン2353万円
・トップ0.01%のキャピタルゲイン2億32259万円


 これは2010年のデータを抽出したものだが、トップ1%と0.01%を並べてみただけで、労働による給与よりも、投資による収益がモノを言っていることがわかる。ピケティ氏の主張である、資本の力の強さが表れている。

 では、トップ1%と10%の年収と、年収+投資の推移を1990年~2010年までを5年刻みで見てみると次のようになる。

◆トップ10%の年収額(年収、年収+投資)
1990年 977万円 1129万円
1995年 971万円 1014万円
2000年 980万円 1006万円
2005年 971万円 1016万円
2010年 913万円 937万円

◆トップ1%の年収額(年収、年収+投資)
1990年 2336万円 3767万円
1995年 2083万円 2475万円
2000年 2168万円 2390万円
2005年 2256万円 2644万円
2010年 2145万円 2353万円

 この期間は俗に言う「失われた20年」にあたるのだが、給与が減少している。もちろん、株式市場も精彩を欠いていたため投資による収益も減少している。

 ピケティ氏の理論である「資本の収益率(r)>経済成長率(g)」は、国によっては、そっくりそのまま当てはまるわけではない。経済成長をなくした国では、富を持っていることの優位性は成長国よりも薄くなる。

 その全体のパイが縮小している日本だが、収入のシェアで見ると次のようになる。

◆収入のシェア
     10%   1%
1990年 33.70  8.05
1995年 34.02  7.30
2000年 37.15  8.22
2005年 40.56  9.42
2010年 40.50  9.51

 高所得者層のシェアが上昇していことがわかる。もちろん、ここに格差が存在することは事実だ。本人も来日しさまざまなところで講演を行ったり、衆参の予算委員会ではピケティ論を引用した質問が野党から出るなど、日本でも白熱している。

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