高所得者住戸と低所得者住戸、さらにそれぞれの専用のエントランスがともに設置された、米ニューヨークの高級コンドミニアムに、低所得者枠55戸に対して8万8000件の申し込みがあったことが、NYタイムズの報道で明らかになった。まったく違う階層が混じった高級コンドの建設計画として昨年論争を巻き起こしたばかり。
では、なぜこうした「同居」というプランになるのか。
この地区は元々、住民の収入の中央値がこの地区の住民の年収の中央値は5万1540ドルかもしくはそれ以下。NYタイムズによれば、中所得者以下の人向けの住戸の供給が十分ではないという。さらに、ポテンシャルが高い好立地ということで高級コンドが開発されると、そうした人たちの住まう機会を奪うということもあり、NY市は減税措置などの行政的措置を講じている。
部屋のプランは、収入レベルが3万240ドル~5万340ドルの人には、賃料1082ドルの2ベッドルーム。もしくは、895ドルの1ベッドルーム、833ドルのスタジオタイプがある。一方、富裕層、超富裕層向けの高級コンドでは、3190スクエアフィート、4ベッドルーム、4.5バスルームのプランが2500万ドルとなっている。
低所得者向けの住戸としてもレベルは高いのだが、富裕層とはすれ違わないようになっている。まずそれぞれに専用エントランスとして別れている点から始まって、眺望が良いリバーサイドの高層階プランは富裕層向けで、プール、ジム、プライベートシアターなどの施設は富裕層住戸の住民だけが使うことができる。
NYは市民の4.63%にあたる約38万人が富裕層(ウエルスインサイト調べ)にあたるものの、ほとんどが中間層や貧困層。そのためか、NY市は低所得者が入居可能な高級マンションを建設すれば、そのデベロッパーには減税措置を受けることができるようにしている。
土地のポテンシャルを考えて高級マンション建設を計画するデベロッパー、一歩でそこに以前から住む富裕層ではない住民との間で、今後もこうした問題は出てきそうだ。